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Super Ancient Civilization of Malta

~マルタ、超古代文明を訪ねて~

Starring: Yosuke Kubozuka
Text: Makiko Yamamoto
Video: Yuki Tanzawa
Photo: Takeshi Hirabayashi
Cooperation: Malta Tourism Authority, Qatar Airways

Super Ancient Civilization of Malta〜マルタ、超古代文明を訪ねて〜 遺跡編

地中海の真ん中に浮かぶ島、マルタ。その名が歴史に登場したのは1530年、ロードス島からマルタに逃げたエルサレムの聖ヨハネ騎士団に関る事項が最初だと言われる。
しかし、この東京23区のおよそ半分、316㎢の小さな島には、それより遥か以前、超古代文明の足跡が遺されていることが後の研究によって発見された。
考古学者たちは、紀元前5200年からマルタに人が住み始め、原始的な生活をしていたと推測しており、それから1600年後、巨大神殿の建設が始まったと考えられている。
果たして、その1600年の間に、どうやって巨石神殿を創り上げるほどの技術が蓄積されたのか。そして、巨石文化が突如歴史から姿を消したのは何故なのか。

エジプトのピラミッドやヨーロッパ各地に点在するストーンヘンジと並び、世界で最も古い神殿と言われるマルタの巨石神殿群。
かねてよりその超古代文明に興味を持っていたと語る、俳優・窪塚洋介とともに“マルタの神秘”を体感する冒険へ、いざ。

Hagar Qim & Mnajdra Temple
(UNESCO World Heritage)

世界遺産 ハジャーイム神殿・イムナイドラ神殿

マルタ島、南西海岸の岩場の台地に隣接しているハジャーイム神殿とイムナイドラ神殿。それぞれ1840年、1893年に発掘され、現存する神殿群の中でも保存状態が大変良好なことで知られる。

この台地は2種類の石灰岩で構成されており、台地上部の柔らかいクロビゲリナ石でハジャーイムが、そしてそこから365mほど下った海を見下ろす岸壁に、地層下部の硬いサンゴ石灰岩によってイムナイドラが建てられた。

「ハジャーイム」という名前はマルタ語で「立っている石」を意味する

ハジャーイムは、紀元前3500年から紀元前2900年の間にいくつかの段階を経て建設された可能性があり、マルタ神殿で最大の石が使われている。その大きさは7×3mで重量は約20トン。

一体どのようにしてこの大きさの石を組み立てたというのか。
「巨石を置いた板の下に小さな丸い石を複数置いて、台車のようにゴロゴロ転がした」との説もあるが、果たしてその丸い小石は20トン以上の巨石に耐えうるのか。砕けてしまうのではないかという異論も飛び交い、結果、未だ謎のままだという。

イムナイドラ神殿には、天体観測をしていた無数の痕跡が残されている

ハジャーイムから500mほど下った先にある、岸壁に迫り建っているような神殿、イムナイドラ神殿群。天体観測と暦の機能を果たしていたとされる当神殿は、楕円形の部屋をもつ主神殿と小さな神殿の2つの建物で構成されている。

東を向いたメインエントランスから差し込む太陽が、春分と秋分には2番目の部屋にある石板にあたり、冬至と夏至には主神殿をつなぐ通路の石柱の角を照らすように計算されて造られているのだ。

点々と無数の丸い穴。果たしてその役割はカレンダーや天体だけだったのだろうか

また、巨石の側面には直径1cmほどの丸い小さな穴が無数に空けられているが、これは天体観測をし、カレンダーとして使用されていたのではないかと考えられている。

Tarxien Temple
(UNESCO World Heritage)

世界遺産 タルシーン神殿

ハジャーイム・イムナイドラ神殿から北東、地下神殿ハイポジウム(状態保存のため撮影禁止)のすぐにあるタルシーン神殿。
1914年に地元の農民によって偶然発見され、その後考古学者が正式に発掘したところ、紀元前3500から2800年頃に作られたものだと推測されている。

ここには超古代文明の豊かな芸術の痕跡が数々残されており、その中で最も有名なのが「Fat Lady」と呼ばれるふくよかな女性の像である。

2.75mもの巨大なその彫刻は上半身がかけた状態で発見され、神殿内ではレプリカを、国立考古学博物館では原物を見ることができる。

4つの神殿はそれぞれ屋根に覆われていたとされ、主神殿は6つの後陣を持つユニークなデザインが特徴的だとされている。

動物のレリーフや永遠を表わしたとされる渦巻き状の円の紋様等から、神殿の本来の目的は生け贄を捧げる場所だったと思われる。
それは祭壇や動物の骨が発掘されたことからもおおよそ正しいと考えられている。

Ggantija Temple
(UNESCO World Heritage)

世界遺産 ジュガンティーヤ神殿

マルタ島からフェリーで30分。ゴゾ島には世界で一番古いと言われている巨石神殿、ジュガンティーヤ神殿が聳える。紀元前3600年頃につくられたとされており、マルタ語で「巨人たちの塔」という意味を持つ「ジュガンティーヤ」の名が示すように、この神殿自体、「巨人たちが建てたものだ」という伝説が残っている。それもそのはず、その巨石のいくつかは長さが5m以上、50トン以上もの重さを誇っているのだ。
そしてこの場所は、ストーンヘンジとエジプトのピラミッドに先行する、世界で最も古い遺跡の一つと考えられている。

ここで発見された動物の骨の残骸は、生け贄を伴うある種の儀式が行われたことを示唆している。そして、石炉があることから、火を使用していたことも認められた。

Ta’ Hagrat Temple
(UNESCO World Heritage)

世界遺産 タ・ハージュラ神殿

マルタ島の西に位置するタ・ハージュラ神殿。この建物の年代は未だ不明だが、巨石神殿造りの初期段階であるジュガンティヤ期の特徴を備えていることから紀元3300〜3000年と推定される。

この規模と複雑さを備えた神殿では世界で最も古いものの一つに数えられており、また、その入り口は地元のコーラリン石灰岩で完全に建てられた唯一の神殿として知られている。

マルタに存在する大部分の神殿にも共通することは、神殿一つに対して5つの後陣を備えているということと、そこでは祭壇や動物の骨の残骸がみつかっているということ(タルシーン神殿の主神殿のみ6つの後陣だが……)。そして何より巨大な石を積み上げ、それが現在も倒れずに残っているということ。それぞれの神殿の目的こそ違えど、「巨石神殿」というこの不可思議で神秘的な建造物は訪れた僕らを完全にノックアウトした。

「超古代文明時代に“本当は”何が起こったか」
科学と知識を駆使して“推測”はできても、“真実”は謎に包まれたままだ。
僕らが唯一できるのは、その場所を訪れ、感じること。
国を知り、土地を観察し、環境を見渡し、そして石からのメッセージを受け取る。
古代の人々が“これ”を作った意味、そして後世に伝えたかったことに想いを馳せる。
すると、石や土地を通して、ふと“繋がった感覚”になる瞬間がある。

インターネットやテレビでは決して感じることのできないこの感覚。
「リアル:現実」を求めて、僕らは旅に出るんだ。

MALTA 遺跡編〜完〜

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