Starring: Yuya Yagira
Text: Makiko Yamamoto
Photo: Taro Washio
Movie: Hiro Mitsuzuka
Music: Kotsubo Sunset/ Toshizo Shiraishi
just a simple dialogue #1/ Yukihiko Yotsukura
Hair& Make-up: Motoko Suga
Styling: Lambda Takahashi
Cooperation: TPB/ Cebu Pacific
今からおよそ30年ほど前にアメリカのサーファーによって発見されたシャルガオ島。
それは横浜市とほぼ同じ大きさで、中心部以外は手つかずの自然が残された野生の島である。
土地を知るには、自らの足で巡るのが1番。
スクーターを調達して、安全点検。
エンジンが鈍い音を立てて回転し始めた…いざ、冒険の始まりだ。
久しぶりに触れるハンドルに、胸が高鳴る。
勘と嗅覚だけを頼りに、心の赴くままにのんびりとタイヤを転がそう。
青々とした原生林が生い茂る一本道。
新緑が醸し出す特有の薫りは僕に生命力を感じさせてくれる。
ほのかな湿気を含んだ空気を切るように進む。
ふと、何かが聞こえた気がした。
波の音?
遠くの潮騒が風に乗って僕の鼓膜をノックしたんだ。
音のする方へ。
辿りついた場所はマグププンコという天然のプール。
干潮の時だけ出現する水場だ。
容易に海底を臨むことができるほどの驚異的な透明度を誇るマグププンコにそっと手を浸してみる。
広がる波紋を目で追いかけているうちに、透き通った海にひゅっと吸い込まれてしまいそうな不思議な気持ちになってくる。
そろそろ次の目的地へ向かおうか。
バイクへ戻る途中、屋台の売り子が声をかけてくれた。
「美味しいよ、食べといで」
地元の言葉は分からないが、きっとそう言っているのだろう。
そういえば小腹が空いていたんだ。
勧められるがままに買った揚げバナナとキャッサバチップス。
揚げバナナは当然美味!
ココナッツジャムをたっぷりかけたキャッサバチップスは初めて食べるのに、どこか懐かしい気持ちになる優しい味だ。
郷に入りては郷に従え。
地元の味覚を味わうのも、また冒険。
なるほど、ビーチサイドでは潮風がいいスパイスになるんだ。
次はどこへ向かおうか。
見たこともないほど背の高いヤシの木が密生している場所を発見した。
何かに導かれるようにヤシ林のほうへ。
一体何メートルあるのか。
高く高く聳えるヤシの木々。
野性味溢れる大きな葉。
細くしなやかな幹のせいだろうか、威圧感は全くなく、むしろ優雅な印象さえ感じさせる。
しばし見蕩れていたら、道端の子どもたちが集まっていた。
旅人が珍しいのだろうか。
それとも僕に興味があるのか。
「こっちへおいでよ、見せたいものがあるんだ」
そう、僕を誘導してくれているようだ。
木々を抜けると、そこは静かな川だった。
小さな小さな船着き場に、ぽつりと一艘の船が停まっていた。
エンジンのない手漕ぎ船。
エメラルド色に輝く細い川を音もなく滑るように進んでいく。
聞こえる音と言えば、ヤシの葉が擦れ合う音、それと小鳥たちの鳴き声。
ひと寄せの波もないこの川は、ほら、川面が鏡みたいだ。
エメラルドグリーンに見えたのは、川に沿って生い茂るヤシの葉が川面に映っていたからなんだと気がついた。
ボートを降りて近くの売店へ。
みんな親しげに話しかけてくれる、
ここの人たちはなんて優しく人なつこいんだろう。
オープンな心で接してくれる彼らに、僕の心も自然と開いていく。
少しのはにかみを残して。
フィリピン名物のデザート、ハロハロをいただこう。
ハロとはタガログ語で「混ぜる」、ハロハロは「混ぜこぜ」という意味なのだそう。
その名の通り、かき氷にカラフルなフルーツや甘く煮た豆や芋を入れ、具だくさんな仕上がり。
ココナツの実に盛られたその姿がますます食欲をそそる。
甘いものを食べて、夕方まで一休みするとしよう。
陽が傾き夜の帳が島を包み始める。
真っ暗になる前に、マーケット街へとバイクを走らせよう。
道沿いに商店が立ち並ぶ島の繁華街でバイクを降りた。
バナナやランブータンなどローカルの食材が所狭しと並べられているその様に興味を惹かれる。
土産物屋で気になるものを見つけた。
ツバの広いストローハット。
ほら、これ一つで、シャルガオらしいスタイリングが完成した。
走って、触って、見て、食べて。
地図なき島を自分のコンパスで探検する…これこそ本当の冒険だ。
あっという間に終わりを迎えたシャルガオでのアドベンチャー。
短い時間だったが色々な感情や感動が凝縮された、記憶に残る2日間だった。
島を離れるのは寂しいけれど、ここでの出来事は一生忘れない。
そう胸に誓って眠りに就いた。
To be continued……