− Words failed me −

Starring: Kaito Yoshimura
Director / Photographer : Ryo Onodera
Stylist : Yuji Yasumoto
Hair Make : Hirono Enokido
Clothing : M A S U

俳優の吉村界人と新進気鋭のクリエイターが織りなす”表現”のADVENTURE。
第6弾となる今回は「Words failed me」と銘打ち、言葉にならない、推し量れないことを掘り下げていく。
どこからが大人で、どこからが子供であるのか。そして、人を信じるということ。

濃紺のスーツを着て、夕日の中に立つ彼の目に、僕たちの目には
何が写っているんだろうか ――――――。

小野寺:まず聞きたかったのが、この前界人から「大人になったな」って言われて、そうかもしれないって思ったんだけど。界人も少し大人になったと思うときがあって、それは前に電話で界人から「価値観を押し付けるのは違う」って話を聞いた時からなんだけど。界人は大人になったって感じる時はある?

吉村:そう感じてたんだけど、やっぱり違ったと今は感じてるかな。やっぱり大人になってなかった。全然。大人になったと思ってたんだけど。

小野寺:それはどういう時にそう思ったの?

吉村:半年前くらい前に思った。ちょうど仕事に復帰したくらいかな。同世代とかちょっと下の年代の人と話して、ふと感じた。「若いな、その考え方。分かるけど……」とか思って。

小野寺:”若いな、その考え方”って思った時に、大人になったって思ったってこと?

吉村:思った。冷静になったなって。一ヶ月くらい前まではそう思ってたんだけど、やっぱりその感情が芽生えてる。23歳のあの頃の。だから子供にまた戻ったと思う。

小野寺:なるほど。その、界人にとっての子供と大人の境ってなんだと思う?

吉村:境……、悔しいか悔しくないかじゃない?まだ、なんでも悔しいって思ってるなら子供だと思う。

小野寺:何かと対峙した時に?

吉村:うん。悔しくないなって思ったら大人じゃない?

小野寺:俺は写真撮る時さ……、いや写真の話はしたくないな。写真じゃなくても、よく人に「信じて欲しい」って言うけど、ある時に界人が「信じていいって言うのに、信じてないのはお前」って言ってたのが頭の中にすごい残ってて、実際そうだなって思ったし。

吉村:うん。

小野寺:最近さ、界人が22、23歳の時に色んな人に色んなことを言われ過ぎて「全部本気で、全部冗談にした」って言ってたよね。23歳から2年くらい会っていなくて今年からまたこうやっているんだけど、久しぶりに会ったら界人の言うことが全部本気に聞こえるし、全部冗談にも本当に聞こえたんだよね。だから「全部本気で全部冗談にした」っていうのを聞いた時に、だからかって納得して。それで、なんでそうしようと思ったのかと全部冗談で全部本気っていうのはどういうことなのか改めて聞きたい。

吉村:そのまんまなんだけど。すごい真剣に何かを言っても、人ってそんな理解してない。ジョークを言っても冗談で済まないこととか行動をしちゃって怒られて。本気で冗談言ってるだけなんだけど。

小野寺:例えば、笑える冗談なら分かる。あとさ、嘘つきって言われて”誰がどのくらい好きかっていうのが面倒くさくなった”って言ってたけど。それは何がキッカケだったの?

吉村:好きな人とか、友達とか、何か表現してる人とか色んな人に言われたからかな。本気で思って言ったんだけど、その時感じたことを全部口に出して、それを後から回収出来ないこととか逆にそうされる時もあって、でもその時の時間は嘘じゃなかったってどうにか思いたいから肯定したいのかもしれない。
もしかしたら、人に期待なんかしたくないし、されたくもなかったのかも。

小野寺:それって凄い寂しくない?誰も信じてくれないから、全部冗談で全部本気ってさ……なんて言うんだろう。言ってることが浮いてる感じがしてこない?

吉村:まぁね。

小野寺:なんて言えばいいのか難しいけど、界人の中にガンッて壁が出来たみたいな。全部本気で全部冗談ってことは、自分の中で本当に思ってることを中々人に言わないってことだよね。

吉村:まぁ、そうかもね。やっぱり全部冗談。あのね、あと信頼されたくない。期待もされたくない。人に揶揄されたくないというか、操作されたくない。だから冗談って言ってると人から信頼も期待もされなくなって、けど自分でやりますけどねっていうのが自分のライフスタイルに合ってるなって思う。絵とかもそうだし、やってるときは勿論本気なんだけど。芝居もそう、現場に言って嘘無く立つ。

小野寺:その瞬間に嘘がないってことだね。

吉村:うん、あとは色んな人に会って、やっぱり自分はヒールの方が合ってるなって思ったんだよね。例えば、ある人が取材でこれはこう感動してって話をしていて、終わって喫煙所で凄いな、良く喋れるなって声をかけたら「思ってないですよ、僕はこういうのを求められてるんで、髪型もそうだし、本当だったら界人くんの、その感じでいきたいっすよ」って言われて。そういうのは他の人にも感じて、それで俺はスーパーマンにはなれないなって、ヒールの方があってるなって。スーパーマンだって人に言えない欲望とか恥ずかしい部分がある。そんなに我慢してよく疲れないなって思う。

小野寺:でもさ、「界人くんみたいにいきたいっすよ」って言われた時に、その人に喋ってた言葉も全部本気で全部冗談ってことは、ここ(自分の胸を指差して)ではないじゃん。それはどうなんだろう。

吉村:分かんないけど、もしかしたら本気のことを言ったんだけど、冗談にしないと世の中浅はかというか。世の中って自由に生きてる人、失敗する人にアタリが強い。だから冗談冗談って。ルーク(吉村の古くからの友人)はどう思う?

ルーク:世の中、本気になっちゃうと、本当の言葉で言っちゃうと傷つく人がいるんじゃない?だからジョークって言わないとやっていけない。だからジョークって自分の中の”逃げ”であって、相手への配慮でもあるのかなって、今の聞いててそう思った。どう?

吉村:そうそう。全部本当で本気でいくと何も成り立たない。

ルーク:うん、だからマイルドにしないと。本気で思ってるんだけど。

小野寺:なるほど。それは今までの話を聞いて思ったことだと思うんだけど。古くからの友人として界人についてどう感じてる?

ルーク:俺は本気でいてくれるから居やすいなって。本気でものを言わない人が多すぎるから。

榎戸:(今回の撮影のヘアメイク)だから、小野寺はジョークって言わなくて良いのにって思うってことになるよね。信用してて欲しいって思うから。

吉村:いや、信用してるんだけどな。

榎戸:本音で言ってるのであれば、マイルドにする必要ないってことでしょ。だから寂しいって感じるんじゃないの?

ルーク:そうだね。確かに「今のジョークだよ」って気遣いの優しさであったりするのかも。

小野寺:うん。まぁ、そうだね。そろそろ、次の話題に行きましょうかね。

吉村:凄い芯に迫ってくるな。

小野寺:人間関係について。界人って同じ人とずっと一緒にいないよね。

吉村:あぁ、そうかも。

小野寺:その理由が、今話してたことと、こう……溶け合う気がする。

吉村:そうかなぁ……。

小野寺:今の「そうかなぁ……」って言うのが少し触れた気がした。次の質問は言葉にならない瞬間についてだったんだけど、今そう感じたからこの質問は飛ばします。えっと、夢はまだ見てる?

吉村:夢は見まくるよ。

小野寺:あれだよ、睡眠の夢じゃなくてだよ。

吉村:あ、そっちじゃないのか。

一同:笑

吉村:夢見てるよ。

小野寺:22歳くらいで会ったと思うけど、あの時見てた夢とあれから4年経った今の夢は変わった?

吉村:変わってたんだけど、戻った。何も考えない、それが夢なんだけど。勝つぞってやつ。

小野寺:あの時よく話してた、誰かに対して負けたくないってこと?

吉村:うん、けどあの時負けたくないって思ってた人達に実際会ってみて、本当にみんな良い人だった、凄くソウルフルで。自分も頑張ろうって思ってたんだけど、やっぱり違うなって。流行りそうな若手俳優の1人っていうのは。うーん、難しいけど。

小野寺:なるほど。そう、22歳くらいの時に界人は「時間がない」って良く言ってたけど、もしそのままの感覚でここまで(26歳)生きて来てたら死んでるんじゃないかって思うくらい、当時はそんな感じだった。だから、そう感じなくなった時があったんじゃないかなって。

吉村:それはあった。相手にされてたからじゃない?多分だけど。会いたい人に会って、好きなもの食べて、生活をして。なんか皆に僕は理解されてたと思ってたんだけど。

小野寺:満たされている感じがしてたってこと?

吉村:そうそう。でも、満たされてる自分にも気づいてなくて、それで全部無くなって。心に付いていた自分の欲望を満たしてくれているものが無くなって。

小野寺:金があるとか、会いたい人に会える環境だとか、表現も。

吉村:そうそう。それが全部無くなって残ったものが”羨望”。だから、失敗って本当良いことだなって思う。最高って思った。うん……、失敗最高。相手にされない最高。某俳優と歩いてて色んな人に携帯持たされるの最高。一つしか道はない、勝つのみ。

榎戸:もし、またその位置までいった時に自分は他の人と同じにならないっていう気持ちはあるの?

吉村:あるよ。失敗したから。失敗してなかったら分からないけど。

小野寺:それも、実際そこにいってみないと分からないことだと思うんだよね。けど、優しくはなったんじゃないかな。妥協とかそういう意味じゃなく。……失敗は人を優しくするんだね。

吉村:するなぁ。

榎戸:うん。そうなって欲しくないから聞いたんだけどね。

吉村:ルークはそういうの思ったりするの?

ルーク:うーん……。それは界人に限ったことじゃなくて、人間の心理的に人って成功していくと自分は偉いじゃないけど、思いやりが段々欠如していくというか。だから、さっきの”失敗すると人は優しくなる”っていうのは当たってるかもしれない。

榎戸:なんか無意識なんだろうけど、変わってっちゃうのはしょうがないのかね。

ルーク:そうそう、無意識。だから、自分を客観視出来る状況で成功していけたらカッコいいよね。

吉村:あと、今思い出したのが久しぶりに現場行って、喫煙所で話したりする時に今なにやってんだろうって現場に違和感を覚えてる人がいっぱい居て、それは監督でもカメラマンの方でも。そういう人が(自分のことを)応援してくれるんだよね。だから、僕自身が評価されなきゃダメだなって思った。

小野寺:なるほど。今、これからまたどうやって進んでいこうと思ってる?変化って必要だと思うんだよね。

吉村:「Back to the basic」って言葉があるように、基本に戻るかな。始めた頃の。というより戻っちゃったから。色んな人に会ったけど結局皆自分大好きで、自分にしか興味がない。そうなると……考えてないな、心だけは。

小野寺:界人はある?自分大好きで、自分にしか興味ないっていうのは。

吉村:大好きとは思わない、ダメだなって思うことはあるけど。人にダメだなっては思わない。それこそ家族とか友達は否定したくない。自分に言ってるのと同じことだと思うし。それこそ”鏡”だから。

ルーク:界人にとっての「Back to the basic」って何なの?

吉村:うーん……やっぱりやりたいことやって、言いたいこと言って、それで評価される。嘘で評価されたくない。我慢してまで評価されたくない。違う意味での我慢とかはあるけど。

ルーク:先月、一緒に曲を作ってた時に”ささやかな愛”が大事だって言ってたけど、それもやっぱり「Back to the basic」なの?

吉村:そう思うけどね。「やるんだ」「変えるんだ」とか革命家みたいに周りの言葉は無視するみたいな。でも、好きな人とか良いなって思う人とは一緒に居たいと思うから、なら愛情持っていこうって。頼って頼られてとかじゃなくて、各々が心のどこかに居ればいい。だから、押しつけがましくない、”ささやかな愛”があれば。

ルーク:なるほどね。

小野寺:今まで話しきて思ったのは界人が悩むことって計れない部分だよね。界人が普段描いてる絵に良く描いてある数式もそういう意味が込められてるのかな。”1+1=4”みたいな。そうじゃないんじゃないかって思うから描いてるのかなって。

吉村:そうなってくると、世の中に確かなものはあるのかってなってくる。

小野寺:牛丼が300円であるという事実みたいな話になってくるよね。

吉村:そう。けど断言しなければいけない、何かを発言しなければいけない人間ってみんなどうやってるんだろうって思う。

小野寺:愛とか、どれくらい好きかどうかってことって計れないとされているけど、解こうとしてる。(界人が)諦めてないというか、希望なのかな……。こうやって話してみて思ったのは。俺は分からないことが怖いんだけど、分からないことも悪くないなって思った。それは……いや、いいや。言葉にしたくなくなった。終わりです。

吉村:押忍。

——Profiles——

吉村界人
俳優
1993年2月2日生まれ、東京都出身。

2014年『ポルトレ-PORTRAIT-』で映画主演デビュー。以降、多数の映画、ドラマ、CMに出演。
2018年 第10回 TAMA映画賞 最優秀新進男優賞を受賞。現在公開中の映画『いちごの唄』、『Diner ダイナー』に出演している他、『わたしは光をにぎっている』への出演を控えている。

〈主な出演作品〉
2014『ポルトレ-PORTRAIT-』(監督:内田俊太郎)
2014『百円の恋』(監督:武正晴)
2016『ディストラクション・ベイビーズ』(監督:真利子哲也)
2016『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(監督:宮藤官九郎)
2017『獣道』(監督:内田英治)
2017『お前はまだグンマを知らない』(監督:水野格)
2017『関ヶ原』(監督:原田眞人)
2017『ビジランテ』(監督:入江悠)
2018『モリのいる場所』(監督:沖田修一)
2018『グッド・ドクター』フジテレビ
2018『コールドケース 2~真実の扉~』WOWOW
2019『いちごの唄』(監督:菅原伸太郎 原作:岡田惠和・峯田和伸)
2019『Diner ダイナー』(監督:蜷川実花)
2019公開予定『わたしは光をにぎっている』(監督:中川龍太郎)

小野寺亮 おのでら・りょう
写真家 / 映画監督
1993年福島県生まれ。

ポートレートを軸に、ファッション、アーティスト写真など幅広く活動。映画監督としても活動しており、監督作品である「トウメイの壁」はゆうばり国際ファンタスティック映画祭他、全国の映画祭で注目を集めた。現在最新作準備中。
HP : http//onoderaryo.com/top
Instagram : https://www.instagram.com/onodera_ryo/

Photo Exhibition
2016 “ヨソモノ” (吉村界人)
2016 “Nobod Knows” (木竜麻生 / 森優作 / 井端珠里 / 潮みか)
2017 “0.1cm” (木竜麻生 / 玄理 / 中村映里子)
2017 “ZÔTÔKA” (村上虹郎 / 小林竜樹)

監督作品
2017『トウメイの壁』(映画)
2017『Nehanne MIHARAYASUHIRO 18SS COLLECTION MOVIE』(CM)
2018『育学園 Web Movie』(CM)
2018『津山市 City Promotion Movie』(CM)
2018『phai – I’ll do(feat.POINT HOPE)』(MV)

塚本弦汰
Photographer/Director
1993年生/ 東京都出身
instagram @g_zooo1
Twitter @g_zooone

2015年 日本写真芸術専門学校を卒業後スタジオで働きながら活動を続けアーティスト写真、ライブ写真映画ポスター、ドラマスチール、MVなどを中心に活動中。

【STEEL】
2015 どついたるねんライブ
2017 映画『スクールアウトサイダー』(監督:松本花奈)
2017 短編映像『hello Never Mind』(監督:浅井一仁)
2018 MV『ガラスを割れ』下り坂46 アバンティーズ
2018 MV『BOY』踊ってばかりの国
2018 TBS 情熱大陸松本花奈短編
2018 テレビ東京ドラマ『恋のツキ』
2018 テレビ東京『電影少女特別編』
2019 映画『テラリウムロッカー』(監督:葛 里華)

【個展】
『ぴゅあ尻展』atはやとちりギャラリー
『Pure ass展』atはやとちりギャラリー

【作品】
どついたるねん2014-2017
踊ってばかりの国ZINE Vol.1

安本 侑史
スタイリスト
鳥取県米子市出身
国内外のファッション媒体、アーティスト、タレントなど幅広い分野で活躍中。

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