—— The soul ——

Starring: Kaito Yoshimura
Directing, Photo & Video: Ryo Onodera
Music: phai
Styling: Yuji Yasumoto

先月より始まった新連載「Man In The Mirror」は、俳優の吉村界人と新進気鋭のクリエイターが織りなす“表現”のADVENTURE。
今回は「The soul」と銘打ち、青年が“架空の獣(けもの)”へと変化する。
誰もが心の奥底に秘めている「自分以外の自分になりたい」という願望を“獣への変身”というテーマで表現した。
音楽は、エレクトロユニットのphaiが担当。

生命感溢れる衣を纏い、夜明けの砂丘の中にひとり佇む————。

「Man In The Mirror」 vol.2 –The soul–

当記事は、今回ディレクションを務めた小野寺亮と吉村界人との対話である。
彼らの考える「生まれ変わり」、「本能」そして「魂」とは。

小野寺:最近、なんかもっと本能のままに生きられたらなって思うことが多くて。それで、今回の獣っていうイメージが浮かんで来た。僕自身、本当はもっと本能のままに生きたいけど、やりたいことをやれなかったり、言いたいことを言えなかったりする。
追い込まれて追い込まれてやっと言えるみたいな瞬間が多い。界人は本能に忠実というか、最後は本能を信じてるような感じがする。辛い時、犬とか鳥とか、なにか動物を見てるとこんな風に生きられたらなって思うことがあるんだけど、界人はある?

吉村:鳥になって飛んでみたいとか、ライオンになって走ってみたいとかはある。

小野寺:じゃあ、「人間でいることが辛いから他の生き物になりたい」って思ったことはないってこと?

吉村:それはない。一時的な感情でならあるけど。

小野寺:じゃあ、自分以外の誰かになりたいって思った事はある?

吉村:何千回もある。何百人に対して、そう思った事はあるよ。街で見た小学生とか外国人の子どもとかいいなとか。有名人とか芸能人に対しては思わない、格好いいとは思うけど。ブラッド・ピッドになりたいとは思わない。なりたいなって思うのは、あくまで日常にいる人達に思う。でも、ほとんどが子ども。大人で誰かになりたいって思ったことは一度もないかも。

小野寺:子どもの方が多いってなんで子どもなんだろう?

吉村:多分自分がやってることとか、思うことが、「子どもだったらまかりとおるんじゃないか」って思うことが多いからそう思うんだと思う。やっぱり大人になるって難しいものだなって思うから子どもを見ていいなって思う。

小野寺:それって本能に繋がるかもね。子どもって言っちゃダメなこと、やっちゃダメなことがわからない。本能に忠実に生きてるよね。教育を受けたり、社会に出て行ったりして理性っていうものがついてくる。

吉村:そうだね。でも、他の誰かになりたいと思うのはたまにだけど。

小野寺:じゃあ、もし生まれ変わったとして自分にもう一度なりたいって思う?

吉村:自分にもう一回なりたいか……なりたくないね、なりたくない。

小野寺:それはなんでだろう。

吉村:疲れるね、自分に。今はなんか、自分に生まれてしまったから、自分を全うするしかないから生きてるけど。もし生まれ変われるなら嫌だね。

小野寺:どういう部分で嫌なの?色々疲れるけどもう一回なりたいって言うと思った。

吉村:いやいや、絶対嫌だね。一番なりたくないのは自分かもしれない。

小野寺:あー……。

吉村:怖いよ、もう一回自分になるのが。それはもっと他の人生を歩みたいとかそういう理由じゃなくて。なんか生きてると、なんで一人でこんなに疲れてんのかなとか、苦しんでんのかなとか。みんなそうなんだけど。頭の片隅に、もう少し疲れない面倒くさくない人生があるんじゃないかって。

小野寺:それって、人それぞれだと思うんだけど、例えば考えすぎるからとか、過去にいじめられてたからそうじゃない人生を歩んでたらどうなってたんだろうと思いつつ、そうじゃなかったら今の反動はなかったのかなとか俺なら思うけど……なんだろう。なりたくない理由って。

吉村:この先ずっと自分と戦わないといけないから嫌だなって思う。それに絶対勝てないって知ってるから。勝てない敵がいるから自分になりたくない。それは自分なんだけど。自分の欲望とか感情とか。自分の人生を歩むってことは、自分の情緒みたいなものがずっとつきまとってくる。「これはこうでこうなってるから」って言われてもやってしまう、言ってしまうとか、誰かに止めろって言われてもやってしまうとか。この戦い。それが無くなったら魂みたいなものが無いってことだから。

小野寺:高校時代のガラケーの時なんてiphoneなんて想像できなかった。今はAI(人工知能)とかも出てきた、VRもそう。そういう技術的な面が進んでるって、より最近感じる。技術が発達していって、どんどん人間と人間が話す機会が減っていっている。セルフレジもそう。
分かってはいたことだけど、何十年後かになったら機械で出来る仕事は機械になっていく。意味のない会話が減っていくというか。恋をするにもSNSで出会ったり。なんか、寂しいなって思うんだよね。人と人とが触れ合う機会が減ることに対してどう思う?

吉村:触れ合う機会?良いんじゃない。

小野寺:あー……。良いのか、そうか……。なんでそう思う?

吉村:良いんじゃないのっていうか、人と人とが触れ合う機会が少なくなるってのはしょうがない。(小野寺は)よくそういうの考えるね。(俺は)考えないけどね、考えないようにしてる訳じゃなくて。それが人間なんじゃないのかな。時代とか、今あるものに対して順応していくのが人間な気がするんだよね。SNSで出会うとか、会わずにメールしてとか。

小野寺:なるほど……。でも、なんか寂しい。昔だったら直接会いに行くとかだったけど、LINEで一瞬で連絡取れるし、読んだか読んでないかも分かる。

吉村:確かにそう思うけど。それはあくまでネガティブな話であって。
でも、例えば「箱」には裏があって側面がある。現代も同じで、だから生きていけると思うんだけどね、俺らはそれに順応してるから。
今あるものの上で生きていくって、楽しいって思う。ライフスタイルは変わっていくけど、そういう気持ちを持ってる人が、小野寺みたいな、俺らみたいな心を持ってる人がいれば、もっと便利になって、もっと人間と人間の関係が希薄になっていったとしても、むしろ濃くなるんだと思う。

小野寺:なるほどね。便利になっていく中でも、その便利さに抵抗したり、違和感を持つ人が生まれるしね。

吉村:だから、より濃くなると思うんだよね。だから良いんだと思う。便利になれば便利になるほど、もっともっと良いものが見えやすくなると思う。見えにくくなるんじゃなくて。そう思わない?

小野寺:確かに、今若手の映画監督の映画が評価されたりしてるのもそうだよね。時代に逆行して振り切って自分の作りたいものを作ったり、大切なものが見えている人達が今、出て来てるのかもね。それってポジティブだね、ポジティブっていうか希望がある。

吉村:実際に毎年歳を重ねるけど、なんか去年よりも一昨年よりも自分自身が良くなったって思ったりしない?

小野寺:それは思う。

吉村:それは何故かっていうのも関係してると思う。色んな物が増えてって、色んなものが見えてきて「自分がなんなのか」って感じるから、より良くなってると思うんだよね。比例しているんだと思う。

小野寺:あとさ、魂ってなんなんだろう。界人の中でどういう意味合いで使ってる?

吉村:なんなんだろう……。

小野寺:こうやって考えてみると難しい……。「決まっている答え」みたいなものなのかな。悩んだけどこっちが良いとか、あくまで感覚でしかないけどそう思う“瞬間”だったり“道”がある。誰に何を言われてもこっちが良いとか、色々あるけどこれしたい、反対にこれはしたくないとか。

吉村:うん。まぁ、誰も触れられない部分だよね。自分にしか触れられない部分というか。自分ですらも触れないぐらいの。「お前そう思うの?」って、「俺はそう思うんだよね」って……Man In The Mirrorじゃないけど。「俺こう思ってたんだ」みたいな。

小野寺:うんうん。すごい考えるよね、界人って。自由とか本能のままに生きてるとか、存在自体が表現とかっていう表面的なイメージとは一転して、本当は凄くピュアに自分とか人に対して物を考えて生きている青年な気がするというかさ。

吉村:……分かった。答え出た、そういうことだ。考えれば考えるほど本能に近づいていく気がする。

小野寺:あー……。

吉村:考えなければ考えないほど理性に近づく気がする。

小野寺:なるほどね。たしかに。生きやすい道ってことか。

吉村:だから「本能」と「物を考える」って一緒な気がする。文字にしたら全然違うんだけど、表裏一体。魂とか本能とかsoul。これ全部、「感じたままに」っていう意味じゃないのかも知れない。話してて気づいたけど。理屈じゃないとかそういうんじゃなくて。本能とか魂とかって考え抜いた人にしか宿らないと思う。

小野寺:うん。

吉村:「考える」ってことが「本能」で、それは「生きる」ってこと。そんな感じがしてこない?

小野寺:うん、しっくりくる。

吉村:ということは、「本能に生きる」って、何かに対して「真剣に考えたい」ってことなのかも。考えて考えて最後に一つ出てくるもの、本能、感情。最後にたどり着くのは。
小野寺もそう。考えて考えて考えて考えて出しましたって。理屈とか理性って感じるのが9割だと思うけど、でも実は逆。

小野寺:じゃあ自分が矢面に立つことによって、周りにどんな影響を与えたい?ちょっと獣ってことから離れてる気がするけど。

吉村:うーん……。

小野寺:なんか、昔は「上手くいかない人がいくように」とか話したよね。

吉村:それは変わらない。でも、繊細であるべきだと思う。繊細で弱いからこそ考える……確かに、獣から離れてるな。獣で言うと、俺らは同じジャングルにいるんだよってことかな。そう思ってくれたら。だから、誰かに対して「ああなって欲しい」とかは思わない。
なんか、こういう会話って自分が知らない自分が浮上してくるというか、「あっそういうことか」って答え合わせしてる気分。

小野寺:たしかに。『Man In The Mirror』ってタイトル通り、 自分が知らない自分を知っていける連載なのかもしれないね。

——Profiles——

吉村界人
俳優
1993年2月2日生まれ、東京都出身。

2014年『ポルトレ-PORTRAIT-』で映画主演デビュー。以降、多数の映画、ドラマ、CMに出演。
2018年 第10回 TAMA映画賞 最優秀新進男優賞を受賞。現在公開中の映画『いちごの唄』、『Diner ダイナー』に出演している他、『わたしは光をにぎっている』への出演を控えている。

〈主な出演作品〉
2014『ポルトレ-PORTRAIT-』(監督:内田俊太郎)
2014『百円の恋』(監督:武正晴)
2016『ディストラクション・ベイビーズ』(監督:真利子哲也)
2016『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(監督:宮藤官九郎)
2017『獣道』(監督:内田英治)
2017『お前はまだグンマを知らない』(監督:水野格)
2017『関ヶ原』(監督:原田眞人)
2017『ビジランテ』(監督:入江悠)
2018『モリのいる場所』(監督:沖田修一)
2018『グッド・ドクター』フジテレビ
2018『コールドケース 2~真実の扉~』WOWOW
2019『いちごの唄』(監督:菅原伸太郎 原作:岡田惠和・峯田和伸)
2019『Diner ダイナー』(監督:蜷川実花)
2019公開予定『わたしは光をにぎっている』(監督:中川龍太郎)

小野寺亮 おのでら・りょう
写真家 / 映画監督
1993年福島県生まれ。

ポートレートを軸に、ファッション、アーティスト写真など幅広く活動。映画監督としても活動しており、監督作品である「トウメイの壁」はゆうばり国際ファンタスティック映画祭他、全国の映画祭で注目を集めた。現在最新作準備中。
HP : http//onoderaryo.com/top
Instagram : https://www.instagram.com/onodera_ryo/

Photo Exhibition
2016 “ヨソモノ” (吉村界人)
2016 “Nobod Knows” (木竜麻生 / 森優作 / 井端珠里 / 潮みか)
2017 “0.1cm” (木竜麻生 / 玄理 / 中村映里子)
2017 “ZÔTÔKA” (村上虹郎 / 小林竜樹)

監督作品
2017『トウメイの壁』(映画)
2017『Nehanne MIHARAYASUHIRO 18SS COLLECTION MOVIE』(CM)
2018『育学園 Web Movie』(CM)
2018『津山市 City Promotion Movie』(CM)
2018『phai – I’ll do(feat.POINT HOPE)』(MV)

安本 侑史
スタイリスト
鳥取県米子市出身
国内外のファッション媒体、アーティスト、タレントなど幅広い分野で活躍中。