Photo/ text: TERU
『函館珈琲』
僕は1971年6月に函館で生まれた。
18年間函館で過ごし、高校を卒業し、上京。
かれこれ30年以上も東京で暮らしている。
忙し過ぎて2年に1度しか函館に帰れなかった時期もあるので、函館という街は僕にとっては特別な場所になった。
年々増す函館への思い。
初めて訪れた人でも包み込んでくれる、温かくて落ち着く街並み。
ゆっくりと流れる時間。
そんな函館がとても恋しくなる時がある。
自粛生活をしていく中で、函館を舞台にした映画『函館珈琲』を観た。
舞台は函館駅から金森倉庫の前を通り、海沿いを歩いた先にある「翡翠館」という珈琲ショップ。
主人公が翡翠館で出会った、それぞれに悩みを抱えつつも夢を追い続ける人々と、彼が住んでいた東京とはまったく違う優しくゆったりと流れる函館特有の時間を過ごし、諦めていた夢にもう1度立ち向かう決心をするというストーリー。
見慣れた風景が映し出される。
路面電車の音は何度も聞いてきたが、軋むブレーキ音が懐かしさを倍増させる。
今まで函館の美しい風景をのんびり眺めたり、心落ち着く場所でゆっくりしようと思ったことはあっただろうか?
時間を気にせずぶらぶら海沿いを歩いたことはあっただろうか?
映画の中で、海沿いの小道を女性が歩くシーンがある。
そこは僕が生まれた家の前の小道。
胸に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
函館は海に囲まれた島のような小さな街で、函館市内端から端へ移動しても30分。
空港から10分の所に湯川という温泉街がある。
渚亭というホテルには露天風呂付きの部屋が100室以上あり、真冬にこの露天風呂に浸かりながら月を眺めるのが好きだ。
渚亭から海岸道路を走り函館山へ向かう途中に石川啄木の銅像がある。
僕はここから見る函館の景色がどこの景色よりも好きで、太陽に照らされてキラキラ揺らめく海に函館山が浮かんでるように見えるその風景を見ると時間が止まってるように感じる時がある。
こんなにも好きな風景だけど、そこに車を停めてゆっくり眺めた事は2度しかない。
次回函館に行った時にはのんびりしてみようと思った。
函館は生まれ故郷なのだけど函館でライブをしない限りは年に1度も帰れない場所ではあった。
2年前に函館山の麓にスタジオを建ててからはレコーディングの度に戻る生活に変わったが、今でも旅をする感覚で戻れる街。
是非みなさんも函館珈琲を観て、函館を旅してみて下さい。
TERU
Profile:GLAY
1994年にメジャーデビューし、2019年に25周年を迎えたロックバンド。
メジャーデビュー以降、CDセールス、ライブ動員数など常に日本の音楽シーンをリードし続け、数々の金字塔を打ち立ててきた。
アニバーサリーイヤーの令和元年には「GLAY DEMOCRACY」というテーマを掲げ、7つの公約を発表。
メットライフドームでの大型ライブ、15枚目のオリジナルアルバム「NO DEMOCRACY」の発売、3ヶ月に渡り全国19公演19万人を動員したアリーナツアーの開催など、精力的に活動した。
2020年3月にはベストアルバム 「REVIEW II」をリリースし、オリコンWeeklyチャートで1位を獲得した。
昨今の新型コロナウイルス感染拡大に対する支援活動として、医療機関に向けて、いち早く1,000万円とマスク5,000枚を寄付し、さらにGLAYの出身地でもある北海道の地域医療を守るために、北海道庁へも1,000万円の寄付を行った。
また、2007年の夕張の財政破綻以降は毎年夕張を訪れ、長期的に支援活動を続けている。