COLUMN

LIFE IS A JOURNEY #019

Actress/ Model
Momoko Tanabe

飛び出して、出逢って

Charlie Brown by Coldplay

私は時々、曲を聴くと頭の中にイメージや感覚を思い浮かべるということがある。ある時は思い出のように、またある時はカフェで流れるBGMのように、心地よく頭の中に浮かび上がってくる。

私にとって音楽は時に、たいしたことない風景を一瞬にして強烈な革命の瞬間にしてくれる。

そして、これから生きていくこの人生の大切な栞になってくれる。

7年前、私は家族でバスツアーに参加し富士山五合目に行くという行程があった。五合目と言ってもそこまでなら車で行けるし、富士山登頂でもないし、初めて行くからある程度は楽しいだろうけど、と、それぐらいにしか思っていなかった。

忘れもしない上りの山道。

イヤホンからCharlie Brown /Coldplay が流れた瞬間に、私の中で何かが一気に弾けた。車窓からは木の葉の間から差し込む無数の光が煌めき、その奥には澄んだ青空が広がっていた。メロディーやテンポと共に自分が乗るバスも駆け上っていく。心の中に羽が生えたように爽快で、この曲を聴くといつも、

今すぐどこかへ駆け出したくなる。

高校卒業後、2週間ほど1人でニューヨークへ旅行したときもこの曲と一緒に旅をした。寝泊まりは知り合いのお家にご厚意で泊めてもらっていたが、一人で観光地も調べずにニューヨークの街をあちこち歩き回った。目に入ってくるもの全てが新鮮で、なんだか嬉しくなった。こんな世界もあるのかと。あの時のときめきは、今でも俳優という自分への大きな原動力になっている。心地よい雰囲気やエネルギーをとにかく必死で吸収した。

興奮と少しの不安が入り混じる私の背中を、強く押し続けてくれた一曲でもある。

知り合いが向こうに住んでいると知った時、

“今行かなきゃ。” という思いに突然駆り立てられた。そこから1ヶ月もしないうちに日本を飛び出したあの1歩は、こんなに大きかったんだなとつくづく思う日々だった。

演技と向き合う中で、思いつきや行動力が最高のアイテムだと気付いた。失敗を躊躇わず無数の可能性を模索することで、演技ではない本物のドラマが生まれるんだと思う。このアイテムは私なりの『飛び出した1歩』だ。

初旅のような突拍子のないアクションが今もこれからも私には不可欠で、それは必ず自分への自信に繋がると信じている。そして自分にとって旅や音楽から受け取るイメージや感覚が、役や私自身を形成する大事な要素になっている。

今、私たちの暮らしはまた一つ転換期を迎え、仕事の仕方や生活スタイルは“ アップデート”を求められている。だれも経験したことがない状況に、私自身、未来への不安が少なからずあるのも事実。しかし、それに勝る熱量を。根拠のない強烈な熱量をずっと感じ続けている。まだ見ぬ景色や感覚に出逢いに行かなくては。この曲のお陰で、居ても立っても居られないのだ。

田辺桃子

Profile:たなべ・ももこ

1999年8月21日生まれ。主な出演作に映画「うちの執事が言うことには」「SUNNY 強い気持ち・強い愛」など。
ドラマ「ゆるキャン△」(テレビ東京系)の大垣千明役で話題を集めた。

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