Interview/ text: Makiko Yamamoto
Photo: Taro Washio
Video: Hiro Mitsuzuka
Music: Mahbie
Location: Somewhere on the earth
Q1年間の休刊を経て、この7月にウェブメディアとして生まれ変わるADVENTURE KING、再始動プロジェクト「ADVENTURE KING unlimited〜終わらない冒険〜」をスタートしたんだ。窪塚さんにはアドキンがスタート時から毎年出てもらって、いつも本当にいいメッセージをいただいていて感謝してます。
今回は、一度原点に立ち返って、窪塚さんと「人生と冒険」について語れればと。窪塚さんは人生の半分以上のキャリアを役者として過ごしている他、音楽活動などもしてるよね。まさに冒険の連続…人生でアドキンを体現してるイメージ。
A途中の休息期間も含めて、俳優は23、4年、その他にも音楽をやったりしているけれど、いつも「今が一番良い」って思って生きてきてここまでくることができていると思う。きつかった時も含めて、それすら“必然で起こっている事象”であり、つまりは“自分が次のステージにいくため”のインビテーションになっていたというか。困難なことって裏を返せば“次のステージに行けるチケット”を手にする過程の苦しみのようなもの。自分自身、ずっと冒険してきている中で、いつも「今が自分自身の最先端。燃えながら飛ぶ火矢の先端」みたいな感覚でいられる。それは本当に幸せだなと思うし、楽しくないこともすべてひっくるめた上で、楽しく生きてこられていると言える。一言で表わすのは難しいけどね。
Qその冒険に満ちた人生、たくさんの選択をしてきていると思うけど、それら「選択」の積み重ねで今の窪塚さんがいるってことだよね。
A今までの選択が全部正しかったかというと、さっきの考え方でいえば全て正しくて、傍目には正しくないと思える選択だって、今この瞬間に「楽しい」と自分が言えればそれは“正しかった選択”になる。正しいか正しくないか、それを考えているんだとしたら、「基準を誰かに求めるな」と思う。“自分”がどう思うか、つまり、自分がハッピーなのかということが一番大事。判断を外部に委ねなければ、きっとみんなずっと幸せでいられると思うし。
結局日々の“小さな選択”が積み重なって人生を揺さぶるような“大きな選択”になるだけであって、言い換えると小さなドアをいくつも開けていって、その結果大きな扉を開けていたというか。
今日の撮影に関しても、「どうやって撮影する?」から始まって「このカットどこで撮ろうか?」といういくつもの選択・決定の集大成が今回のアドキンの記事になるわけだし、もっと広く言ったら俺の今月の、今年の、人生の表現になっていくわけだから、それこそ「今この瞬間しかない」と思って、瞬間を楽しんでやりきっていけば、最終的には「正しかった選択」といえるんだと思うな。
Qいまこの瞬間も選択をしている…つまり人生とは小さな選択の積み重ねなんだよね。振り返れば、私自身これまで、第六感というか感性に任せて選択をしてきた気がするけれど、窪塚さんは選択をするとき、基準や軸にしているものってある?
A人それぞれだと思うけど、俺にとっては“その選択”が自分の中でバランスとれているかどうかが大事だね。これをやったら自分が自分じゃなくなったり、自分がワクワクしないんだったらその選択肢はとらない。
ただ、今は多少の我慢や自分らしくないことも、ときに“アリ”になってきているかな。根底は変わらないけど、年々、自分の幹(みき)は俺自身の年輪みたいな感じでどんどん大きくなってきているというか。10年前に「無理だ、やりたくない」と思っていたことも、今は自分の許容範囲にすっぽり収まって、別にどんな事をしようが、自分が自分じゃなくなっちゃうとは思ってないから、色んなことができる。
なぜなら、今は昔に比べて自分の芯の在処がより明確になっているから。だからその分自分の幅が横にどんどん広くなっているっていう実感がある。これやったら間違っているんじゃないか、これやったらフェイクって言われるんじゃないかっていう発想って、結局、自分に自信がないから誰かに判断を委ねているわけじゃん?
「これやったら俺フェイクですか?」「これやったら間違ってますか?」とか…「それ誰に聞いとんねん!?」って話。アドバイスとして参考程度にきくのはいいけど、他者は絶対に答えを持っていないから。今年で40歳、歳を重ねた今、そこはやっぱり強く思うね。
Q言葉の重みが違う!相当な経験をされてきたんだよね。
Aときには痛い目みながらね(笑)。
芝居に関してもそうで、今年11月公開予定のNetflixのドラマ「GIRI/HAJI(原題)」に関しても映画「沈黙—サイレンス—」に関しても、これでいいんだなって思えたというか。「あ、俺このまま行きゃいいんだ」って。どこかで偉そうに喋りながらも(笑)、日々寝る前に今日も良い1日だったなって確認して寝ることで、今日までの自分がセーブされて、再構築されて、明日の自分は、「より良くより先端にいる自分」になれる気がしているから。
QNetflixにしてもハリウッド映画にしても、海外のお仕事だもんね。海外って仕事のやり方も全然違ってそうで刺激的なイメージ。
Aうん、何が違ったかというと全部違った。でも、違う環境、違う場所にいても、自分のやり方でやれたということが嬉しいし、自信になったし。空気も違えば、飯も違うし、人も違うし、やっている仕事の内容も違うから比べにくいけど、どこにいても何をしていても“心地いいと思う自分のバランス”は変わらないから、そこを再確認して、改めて力をもらって…また先に進む原動力、ガソリンが入ったかなと思うな。
Q最近はDiorやCartierなどのファッションブランドとのお仕事も話題になってるよね。さっき話してくれたように、年々幅が広がっているなと、傍からみていても思う。
A俳優やって役者やって、Reggae Deejayやって、モデルやって、たまにはMV撮ったり、写真撮ったり…そういうのは全部自分の表現。モデルのときは服がメインだし、その服がより良く見えるようにする。MVを撮っているときは自分自身が良く見えるように、役者をやっているときはその作品が生きるように…という具合に、役目ごとに見せ方は変えるけれど、全ては自分の根底、根っこから咲いている花だから、全部好きでやってることには変わりはないし。
Qいつも思うのが2012年に最初あったときから、窪塚さんは良い意味で変わらないなと。もちろん時とともに積み重ねて来た部分はあると思うけれど、芯の部分、根底は変わらずいつも自然体だから、対話の度にほっとするというか。
そんな窪塚さんでも、上手く行かないなぁってストレスを感じる日はあったりする?
Aあんまり自覚はないけどないことはないと思う。
Qそういうときってどうやって解決していくの?
Aそれをまた変に意識してることの方が嫌だなって思うから、そういうときは自分を信じて、自分の好きなこと、楽しめることをするのが、1番と思う。やっぱりみんな人だし、得意なことは違ったりするけれども、みんな同じ土俵の上、同じ地球上に立ってると思えば、自ずと大事なことは見えてくるかな。これが答えになるかは分からないけれど、例えば、すごいガチガチに緊張してる現場だったら俺はピエロやるし、逆にぬるいナメた現場だったら俺は怒る。でもそれは気持ちいい温度の風呂に入りたいのと同じで、そうやってバランスとって、自分が心地いい温度の現場を作りたいというのはあるかな。
Q今回ADVENTURE KING unlimitedはもう一度アドキンの原点に戻って、「人生は旅であり生きることは冒険だ」を考えていこうという企画なんだけど、窪塚さんが生きる上で大切にしている信念や軸ってある?
A今日ずっとしゃべってきたことは日頃考えてるし、考えないで身体で反応できるようになりたいなって。原点という言葉を使うんだったら、原点と最先端は同居しているはずで、しているべきだと俺は思ってる。原点がなかったら最先端もないからね。
それって一見矛盾しているようだけど、その矛盾が一つの場所にあり得るように、バランスを取ることが大事。そうなれれば、すごい力が出ると思うし。
Q相反する事象を共存させるって、仏教とかヒンディー教の考え方と通ずるところがあるね。
Aそれはタオのマーク(太陰太極図)といわれていて、自分自身がそうなれればすごくいいんじゃないかなと思う。どんな状態でもタオの雛形は必ず万物の中心にあるはずで、パサッと輪切りにしたらあの形がでてくるはずだから。それが綺麗な円、綺麗なバランスで構成されてたら素敵な人になれてると思うし、いい冒険ができてる証拠なんじゃないかなと思う。
Qでは最後に、今後冒険したいことを聞かせて。
A今は20代より100倍くらい楽しくなっていて、そう思うとこの延長線上それをずっと極めていけば、きっとどこかにたどり着くんじゃないかなと。遠くまでいくとか上がれるところまで上がるとかっていう「外へのリーチ」ではなく、どこまで自分の奥深くへいけるかっていう「奥へのアプローチ」を突き詰めていきたいなと思ってる。それこそ原点という言い方をしてもいいけれど、「何のためにここに生まれてきたのか」というのを突き詰めて、クリアにしながら生きていけたら、ハッピーなんていう概念をも超越した何かに出会えるんじゃないかなと思ってる。
それが俺にとっての一番の大冒険かなと思うね。
Yosuke Kubozuka Profile
神奈川県横須賀市出身。
1995年「金田一少年の事件簿」で俳優デビュー。
その後2000年「池袋ウエストゲートパーク」の怪演で注目される。
2001年公開映画「GO」でその名前を一気に広め、第25回日本アカデミー賞では新人賞と史上最 年少で最優秀主演男優賞を受賞。
以降、映画「ピンポン」「凶気の桜」「Laundry」「Monsters Club」「ヘルタースケルター」 「ジ、エクストリーム、スキヤキ」「サンブンノイチ」「TOKYO TRIBE」「Zアイランド」など 数多くの映画に出演。今後も待機作多数。
2017年に公開された「Silence-沈黙-」(マーティン・スコセッシ監督)では、物語の鍵となる”キチジロー”を演じ、ハリウッドデビューを果たす。
2019年公開予定の BBC×Netflix London 連続ドラマ「Giri/Haji」では物語の土台となるメインキャストを英国・日本両国内での撮影を行い、今後もエリザベス・バンクスとの共演作品「Rita Hayworth with a Hand Grenade(仮訳邦題:リタ・ヘイワースと手榴弾)の撮影などを控えており、海外作品にも積極的に進出している。
ファッション業界での注目度も高く、デビューからファッション誌のモデルを続け、多くの雑誌 の表紙を飾っている。2017年にはadidas上海のモデルにも起用された。
2018年初旬、国内雑誌とのコラボレーション企画にてDIORのパリコレにゲスト招待される。
2010年には初舞台「血は立ったまま眠っている」(蜷川幸雄演出、寺山修司作)で孤独なテロリスト役を演じ、2011年には二度目の舞台である「血の婚礼」(蜷川幸雄演出、清水邦夫作)で主演。
2012年の「シンベリン」(蜷川幸雄演出、シェイクスピア作)に出演。ロンドン公演で初の 海外舞台を経験する。2015年11月には豊田利晃監督の初演出による舞台「怪獣の教え」に主演。 2016年9月には再演も行われた。
2018年春、17年ぶりにNHKにナレーションで出演。(ETV特集 「Reborn~再生を描く~」)
また、2006年から卍LINE(マンジライン)名義でレゲエDeejayとしての音楽活動を行っており、年間100本近いライブを行う。2015年12月には自身初のベストアルバム「卍LINE BEST」をリリースした。
6枚目のオリジナルアルバム『真説 ~卍忍法帖~ 福流緑』を2017年5月にリリース。 2018年春の中国ツアーも成功を収めた。
またこの年、自身初の単独トークショー「のんべんだらり」をスタートさせる。執筆活動も積極的に行っており、詩やエッセイ、旅行記などを多数出版、3年ぶりとなる「コドナの言葉」も 2018年に出版した。
2018年にはメンズスキンケアブランド「BULKHOMME」の、ブランドアンバサダーに起用される。