TRAVEL

Vol.11
界 長門

〜ときを経て山口最古の温泉が再生する〜

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Photo/text: Makiko Yamamoto

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山口県、長門……かつては毛利藩藩主が湯治に訪れたという名湯の地。
高度経済成長期にはおよそ40万人もの旅行客が訪れる温泉街として栄えてきた。
しかし、近年の旅行スタイルの変遷とともに温泉街の旅行客が減少、そこで長門市が主体となり2014年より温泉街の再生プロジェクトをスタートさせた。

長門市長の呼びかけに応える形で星野リゾートが再興に乗り出したのは2016年。街全体をデザインするという壮大なプロジェクトは、ようやく2020年春、界 長門の開業にこぎつけた。

「自然を生かした魅力的な温泉街を持つ温泉地」を目指し、様々なコンテンツを投入。

豊かな緑をたたえる音信川沿いの長門温泉街がいま再生の息吹を吹きかえしはじめた。

参勤交代の時、藩主が本陣を構えた御茶屋屋敷をイメージして建てられた「界 長門」は落ち着いた色合いと風格のある佇まいで、長門温泉街のシンボル的存在を放っている。

ご当地部屋「長門五彩(ごさい)の間」

「五彩」とは、客室を彩る5つの要素、山口県の伝統工芸「徳地和紙」「萩焼」「萩ガラス」「大内塗」「窓から見える四季折々の景色」のこと。

和の要素にソファやベッドなど居心地の良さを組み合わせた快適な客室は、山口県の武家文化を活かし、藩主が休む寝台をイメージ。寝台が一段高くなっており、格子状の囲いは高貴な雰囲気を演出している。
特にベッドボードに使用されている「徳地和紙」は室町時代より800年以上続き、江戸時代には藩の重要な輸出品の一つであった。現在和紙工房はわずか数戸しか残っておらず、山口市の無形文化財に指定されている。

「あけぼのカフェ」

界 長門は「長門湯本温泉観光まちづくり計画」で掲げる、魅力的な温泉街の一部になることを目指しており、「温泉街そぞろ歩き」を楽しめるコンテンツの一つとして、界ブランドでは初の、宿泊者以外でも利用できるカフェ「あけぼのカフェ」を併設している。

「あけぼのカフェ」では、粒あんのほか、山口県特産である「夏みかん」、山口県オリジナルの柑橘「ゆずきち」を使用した3種類の特製どらやきとドリンクを楽しむことができる。

季節の会席料理

酢の物・八寸・お造りを一緒に盛り合わせた華やかな「宝楽盛り」。花が飾られている桶は、山口県内唯一の桶職人であり、公益社団法人国土緑化推進機構が定める「森の名手・名人」に選定された坂村 晃氏の手によるもの。そのほか、器には萩焼が採用されている

お待ちかねの夕食は、プライベートが保てる半個室の食事処でゆったりといただこう。
地域ならではの旬の食材を生かした会席料理を、意匠を凝らした器とともに楽しむことができる。

イカの摂取量、全国第2位を誇る山口県の甘みが強く肉厚なイカを先付けやお造りで堪能できる。

山口県で親しまれているふぐと、牛肉の両方を味わえる源平鍋は、山口特産の柑橘を添えて。
爽やかな味わいで食欲もすすむ。

長門湯本温泉

食事の後は温泉に浸かってくつろぎのひとときを。
山口県最古の温泉「長門湯本温泉」は室町時代、藩主が湯治に来ていた場所と言われている。

そんな藩主を癒した温泉は、アルカリが強くとろりとしており、まるで化粧水のような泉質が特徴。
界 長門では、湯温が高い「あつ湯」と源泉かけ流しの「ぬる湯」がある内風呂に加え、美しい中庭を臨む露天風呂も楽しむことができる。

ご当地楽「おとなの墨あそび」

界ブランドのおもてなしの一つ、ご当地の文化を体験する「ご当地楽(ごとうちがく)」。ここ界 長門では、山口県の伝統工芸「赤間硯」で墨をすり、扇形の型紙に自由に創作できる「おとなの墨あそび」を体験できる。

江戸時代、参勤交代の時の献上品として赤間硯が採用されていたほか、松下村塾の師である吉田松陰も愛用したと言われている。
粒子が細かく、発色や伸びが良い墨汁を得ることができる赤間硯、現存する職人はわずか3名と非常に希少な硯に触れ、墨汁の香りに癒される貴重な体験を満喫しよう。

温泉街そぞろ歩き

清流、音信川(おとずれがわ)沿いに続く長門温泉街。
「長門湯本温泉観光まちづくり計画」によって徐々に新たな表情を讃えはじめている。

趣を残しながらも美しく整備された川沿いは湯上りの散歩にも最適。
昼にはお土産物屋やカフェめぐりを楽しめるように、商店なども充実している。

山口県内で最古の温泉であり、温泉街の顔となる外湯「恩湯(おんとう)」。向かい側には長門市の素材を中心に使った「恩湯食(おんとうしょく)」も開業し、立ち寄り湯としての魅力も充実した。

また、夜は地元名物のやきとり屋などをハシゴしながら美しくライトアップされたリバーサイドを歩くのがいいだろう。

萩焼 新庄助右衛門窯

日本の作陶の歴史でも古い歴史を持つ萩焼。
長門市の萩焼深川窯には現在5つの窯元がある。
その中の一つ、新庄助右衛門窯 十四代 新庄 貞嗣を訪れた。

萩焼開窯(藩窯)以来の窯の一つであり、茶陶を中心に制作している新庄窯では、伝統の技法を今日に活かして作陶している。

窯ができた始めから大正時代まで使われた登り窯。
「萩焼深川古窯跡群」の一つとして指定文化財となっている。

コンテンツも増え、徐々にかつての活気を取り戻しつつある長門湯本温泉郷。
他の温泉街とは一線を画した、上品で静かな雰囲気は、まさに大人の遠足にぴったりだといえよう。

星野リゾート 界 長門
〒759-4103 山口県長門市深川湯本2229-1
宿泊予約:0570-073-011(界予約センター)
https://kai-ryokan.jp/nagato/

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