INTERVIEW

Special Interview TAMAKO

活発婉麗な女戦士

今も昔も、女性は“美”を求める。テクノロジーの進化とともに、ドラスティックな美容法が世に溢れる中で、本質的な「美」を自身の活動を通して伝える化粧品開発者に出会った。
植物のもつパワーを科学の力で最大限引き出して製品に込めたスキンケアライン「SHUGYOKU by TAMAKO」の開発者であり、食香美容研究家のTAMAKO氏。
徹底的に素材にこだわり、人本来が持っている強さ美しさを引き出す…彼女が提唱する哲学が生まれたその背景とは。

Text,interview: Makiko Yamamoto, Naoya Koike
Photo: Chiaki Oshima

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――食香美容研究家として活動されているTAMAKOさん。過去に何度かお会いさせていただいておりますが、その知性と優雅さの背景に常々興味がありました。幼少期からの歩みについてお聞かせいただけますか。

TAMAKO:日本人の父、韓国と中国の血を持つ母、さらにロシアの血も入っている祖母がおり、多国籍な文化のもとで育ちました。母方の影響が強かったのか、子どもの頃から家に薬膳や漢方があるのが自然でした。友達の家に行くと普通のお惣菜や洋食などが出てくるのに、私の家だけ高麗人参やキムチがあったんです。
家庭のベースにあった概念が「医食同源」。だからスキンケアを意識するというよりも、「食事と天然のものを大事にする」という、基本的な考えが祖母から受け継がれたんですね。そこで育ったのでハーブや薬膳に関する知識も深まっていきました。

――美や健康を追求しようと思った経緯をお聞かせください。

TAMAKO:大学卒業後はマーケティングの仕事をしていました。その頃は少しモデルの仕事もしていて、「ミス・アジアパシフィック・ビューティコンテスト」で「ミス・スイムスーツ賞」を受賞したこともあります。
でも自分の美を訴えるよりも、「そのスキルを手に入れて人を美しくしたい」という想いが強くて。だから一念発起して復学、日本の学校で学びヨーロッパで修行してからサロンをオープンする形になりました。

――ヨーロッパではどんな修行をされていたのですか?

TAMAKO:トリートメントの修行です。ラグジュアリーブランド数社のオフィシャルトレーナーとして海外研修に行ったり、あとは自分でフランスを訪れて現地で学んだり。そんななかでドイツのマダムからオファーをいただいてトリートメントをしに行くこともありました。どんな女性にも美しくなるポイントが絶対にある。見た目で悩んでいる方も心持ち次第だと思うんです。

自分のウィークポイントも他人から見たらチャーミングだったりして、そこを私なりにサポートしたいと感じていました。自分が着飾ることも楽しいのですが、誰かをきれいにして喜んでもらえるのが本当に嬉しくて。それで突き進んでいった感じですね。

――まさに使命感を持たれたと。当時はおいくつだったのでしょうか。

TAMAKO:25歳の時だからだいぶ前ですね。

――自身のこだわりである「機械よりもハンド」という考えは、「自分が本来持つ力で綺麗になる」といった幼少期に培った経験に由来されているのですか?

TAMAKO:もちろん機械を使ったり、美容クリニックで施術するのも美しくなるにはアリだと思います。でも本来の美を引き出すためには「Heart to heart」というか、その人の呼吸や体温を直に感じて、お客様の自信が持てるような仕事をしたかったのでハンドにたどり着きました。心の状態がどうなっているかが肌に影響する、というのは科学的に明らかになっています。

――確かに、自信や心持ち次第で、同じ人でも別人のような美しさを感じる時がありますよね。

TAMAKO:その「揺らぎ」が人間の面白い点です。女性の場合は月の周期などの影響もあるので、「人生すべてが調子いい」ということは多くないと思います。そのバロメーターのなかで、アップダウンの波を安定させると心が強くなるし、特に「美しくなろう」というパワーがある時って仕事や恋愛でも高いモチベーションでいられるじゃないですか。それを考えながらトリートメントをしてきましたし、そういった流れで「SHUGYOKU」の主力製品も生まれました。

――2008年にはプライベートサロンをオープンして、予約が取れないほどのゴッドハンドぶりを発揮されますね。

TAMAKO:最初はひとりでこじんまりと立ち上げたんですが、「結果が出る」と反響がすごくて。宣伝は一切していませんでしたが、口コミでタレントやモデル、女優に広がり、ありがたいことにメディアの方や雑誌の編集長さんとかも個人的に通ってくださるようになったんです。それで認知されていった感じですね。

――続いてオリジナルコスメも作られるようになったと。

TAMAKO:そうですね。ヨーロッパのブランドトレーナーをしていたので、そのコスメを使ってトリートメントしていたのですが、向こうの人とアジア人の肌の違いを如実に感じたんです。海外のラグジュアリーメーカーは素敵で夢も実績もあるのですが、実際の手応えとしてアジア人女性のためのスキンケアの必要性があるなと。それから悩んでいた女性のために天然の優しい香りのアロマオイルを1本作ったんです。これをきっかけにして、そのトリートメントが人気になって製品化していきました。

――ラインナップも豊富ですね。

TAMAKO:現在もリニューアルを繰り返しながら、10製品ほどを揃えています。

――すべての製品にTAMAKOさんの哲学が反映されていると。

TAMAKO:しっかり先端の科学も入れながら結果も出したかったのもあり、常に様々な論文などに目を通して成分を厳選しています。植物性のものは身近なものの方が体に合うと思うので、アジア産でパワーのあるハーブを選びますね。

――多忙な日々の積み重ねか、「ラムゼイ・ハント症候群」を患われました。

TAMAKO:あれはもう10年ほど前、36歳くらいのときです。あまりに多忙なのとストレスで顔面麻痺を起こしてしまったんです。突然のことで脳梗塞かと思いましたが、違いましたね。でも今は回復して、健康であることがとてもハッピーだなと感じます。

サロンを閉めたのが2020年の頭でしたが、それから現在までスキンケア1本でやってきました。チャレンジを続けていると手応えを感じられない停滞期があると思います。ひとつのことをやればやるほど成果が上がらなかったり、立ち向かうのが難しい瞬間もあり、自分自身を追い詰めていたのかもしれません。

自身の病気を経て気がついたことがありました。当時の30代の自分には、60代以上など、自分以上の年齢のお客様の本当の悩みが理解できていなかったことに気がついたんです。「シミ、シワが」という声を表層的にしか捉えられていなかったなと。でも自分が顔面麻痺を経験することで「こんなにも不自由なんだ」、「こんなにも肌トラブルがあると落ち込むんだ」と感じられた。それを製品作りに活かして完成したのが、「SHUGYOKU」のクレンジングクリーム。今考えると病気もチャンスだったなと思います。

――私も使用していますが肌がとても柔らかくなりますね。

TAMAKO:化粧品は通常、クレンジングがあって洗顔フォーム、化粧水と考えがちなのですが、そういう概念が崩れましたね。ゲシュタルト崩壊みたいな(笑)。「固定観念に捕らわれるのを辞めよう」と考えたことが今の開発に活かされています。型にはめた提案よりも、お客様のリアルな生活や悩みを基に毎日のルーティンに組み込めるものであれば、形態や形状は何でもいいなと。

――自分が大変な時こそ、痛い人の気持ちが分かったり、優しくなれたりするというTAMAKOさんのお話がとても力強いなと思いました。『ADVENTURE KING』でインタビューしてきたのは、一筋縄ではいかない人生を送られてきた方ばかり。皆さん「反省はするけど、後悔はしない」という生き方なんですよ。

TAMAKO:会社の経営的にもコロナ禍などでピンチがありましたが、恐れがありつつ、ワクワクするんです(笑)。チャンスなのかもしれない、試されてるなと。逆境で考えるのは誰かと比べることではなく、「自分に絶対負けたくない」ということ。「SHUGYOKU」のテーマのひとつも「珠玉の自分を作る」ですが、それを掲げるのは「アイコニックな存在に憧れるよりも、誰にもない最高値の美しさを引き出す製品を作りたい」という想いからなんです。それぞれのオリジナルな美を際立たせたい。だからピンチはワクワクのモトなのかも。

他の取材でも「他のブランドとコンセプトやラインが違う」と質問を受けますが、そういう時に「私は他社さんのベンチマークをかけたりもせずに、『Enya方式』でやっています」と答えるんですよ。歌手のEnyaさんは他アーティストの音楽を聴かず、影響を受けないことでオリジナルな音楽を生み出している。だからスキンケアも修行して学んだからからこそ、「本当にこれが求められているのか?」という不安があっても、オリジナリティを持って切り込んでいきたいと思っています。

――それは自分を信じて、内と向き合って製品を作っているということですね。今は「他社がこういうラインを作っているから」というマーケティングがほとんどです。でも「SHUGYOKU」はオリジナルのポートフォリオで展開されています。

TAMAKO:大手企業のやりかたももちろん正しい。ただ弊社はすごく小さい会社なので、その法則で開発したら何の魅力もない製品になる可能性があるんです。だから自分を信じないといけない。それは5万人以上のお客様を直接触ったり、カウンセリングさせていただいたなかで与えてもらった勇気があるからこそ可能なことなのです。

――実際に「SHUGYOKU」の製品を使ってみると、肌への浸透感が違いますし、テクスチャーから“誇り”すら感じます。

TAMAKO:ありがとうございます。最初はサロン専売品みたいな感じで、来店してくださった方向けに2アイテムくらいしかありませんでした。他社さんがほとんど使っていない原料を選んでいたりして予算の都合上、大量生産ができず当時のパッケージはごくシンプル。でもデザインよりも「中身がいいから」と製品自体にフォーカスしてくださる方が一定数いたんですよ。その時に「真のラグジュアリー」って「高ければいい」とか「高級であればいい」ではなく、本質的なものだなと理解できました。

もちろん会社の規模や企画によって予算は決まっているので、すべてを完璧にはできません。でも単に「シワが伸びる」ということでなく、フィーリングとして感じられるハートと原料は惜しみなく入れて作っているんですよ。

――これからの活動を通して世の女性に伝えたいこと、そしてTAMAKOさんが目指す次の冒険についても聞かせてください。

TAMAKO:まずは、より多くのお客さんに知っていただきたいです。そして今は激動の時代。先ほどの「本質とは何か?」や「本当の幸せとは何か?」という壁に改めてぶち当たるような情勢だと思っていて。そんな世の中で「SHUGYOKU」製品が何か日常にある希望になれば嬉しいです。

単に肌を整えるエイジングケア用のコスメではなく、うちの製品は「更年期で今までとは肌質が変わり、敏感傾向なんだけどエイジングケアをしたい」という方のためのもの。そんな人生の「揺らぎ」に伴走できるような、自分のコアの支えになるようなアイテムでありたいですし、それを伝えたい。

――美しい方って佇まいからも内面から美しいんだなと感じますよね。

TAMAKO:見た目だけ、心だけでなく、三位一体のようにバランスがとれていれば、どんな困難の中でも人は生きていけます。性別や年齢に関わらず、自分の持っている可能性を諦めてほしくない。大人になると「この人、きれいだけど揺らぎを感じないな」と考えることがありますが、容姿ではなく本質的な美のオーラの存在を年齢を経るほどに感じられるはずです。

物の解釈、日常の鍛錬も重みに繋がってくるはず。適当に過ごそうとしたらルーティンで片付いてしまう毎日のなかで、皆さまのモチベーションや記憶、生き方など、何かを喚起させる製品がになれたら。そして、それをどれだけ拾えるかで人生の豊かさは変わりますよね。

たくさんものがあればいいという世界ではないので、価格や大小に関わらず、自分の価値を意味づけてくれるようなプロダクトがあれば幸せも増えていくのかなと。スキンケアやヘルスケア、メンタルケアも、それぞれがイメージする「幸せな人」を目指すためのものであってほしいと思っています。

――TAMAKOさんご自身、今後は活動範囲も広げられるとか。

TAMAKO:はい。現在「SHUGYOKU」の開発者であることとは別に、子どもの頃から薬膳などに親しんできたので、食香美容研究家として香りと食にフォーカスしていくつもりです。アイテムに入っている天然成分も食品のハーブなので、リンクする部分があるんですよ。私、前世でハーバリストだったのかなと思うんです(笑)。

――または美しい魔女とか(笑)。

TAMAKO:魔女だったら、ホワイト・ウィッチであることを願います(笑)。香りを含めた五感を研ぎ澄まして味わう、健康的なメニューを幅広く提案する活動をちょうど始めたんですよ。スキンケアも大事ですが、最終的に美容よりも体の健康が先ですし、メンタルもリンクしていますから。日常でよりよい食生活やウェルビーイングを提唱していきたいですね。

Profile:TAMAKO

SHUGYOKU開発者、食香美容研究家

ヨーロッパをはじめ、世界各国で5万人以上の肌に触れてきた元エステティシャン。数々のプレステージブランドのトレーナーも歴任し、トリートメント開発にも携わる。2008年にプライベートサロンをオープンし、顧客であった美容関係者やセレブリティの声に応え、皮膚科学、生理解剖額、栄養学などの知識と実践を結びつけたエイジングケアコスメ『SHUGYOKU』を2011年より展開している。幼少期より漢方、韓方、ハーブなどベースに育った経緯いからエイジングケアを目的としたレシピ、香りを使ったレシピ開発など食品会社や外資系ホテルと共同開発メニュー多数。

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