『和』というキーワードを投げかけられたとき、我々はなにを想像するだろう。
着物、日本酒、木造家屋、畳の香り……場所でいうなら「京都」を挙げることが多いのではないだろうか。
文献でしか伺い知ることができないが、貴族文化が栄えた平安時代の京都は、それはそれは華やかだった。
和歌、短歌などの教養を身につけ、蹴鞠や聞香などの遊びに興じる貴族たちの優雅な暮らし。
同時にそれは“自然”とともに生きることだったのかも知れない。
四季折々に美しい姿を見せる京都、その中でもまるで貴族の私邸に迷い込んだかのようなタイムトリップを味わえる場所がある。
「星のや京都」ここは、我々が忘れがちな、“自然とともにすごす優雅なひととき”を味わえる水辺の私邸だ。
渡月橋の袂にある「星のや京都」専用船着き所から舟にのりこみ大堰川を遡る。
平安の古へのタイムトリップはここから始まる。

上流へと進むにしたがい、両側から自然がせり出してくる。
たった15分なのにすっかり人里離れた嵐山の奥地の様相だ。

星のや京都入り口。美しい木々と日本家屋が織りなす、まさに絶景といえよう
景観保護区の中につくられているという星のや京都は、客室25室、全室がリバービューを誇る。

メゾネット客室1F部分
新緑香る清々しい空気を胸一杯に吸い込む。
静かだからこそ耳に沁みいる水の音、葉がこすれ合う音。
時の流れがゆったりと感じられるのは決して気のせいではない。

メゾネット客室2F部分。眼下には大堰川を見渡せ、対岸にはトロッコ列車が走る、ノスタルジックな情景が広がる
全身の力が抜けていくのを感じる。
呼吸をする度に、張りつめた心が少しずつ柔らかくなってくる。
「あぁ、求めていたものはこれだったんだ」そう確信する、「ここにきて良かった」と。

奥の庭は多目的スペースとなっており、お抹茶体験や朝の深呼吸を行うスペースとしても使用される。通常は椅子やベンチで寛ぎの空間として使用可能
星のや京都では貴族の遊びにも触れ合うことができる。
男女が顔を合わせることが許されなかった平安時代、貴族たちはそれぞれの香りでお互いを認識したのだという。
嗅覚を頼りに相手を想うなんて、今のこの便利な世の中では考えられないほどもどかしく、そのぶん官能的であるといえないか。

聞香体験。香りはもちろん道具にも風情を感じる
部屋でくつろぎ、ちょっとした遊びに興じたあとは、夕食を。
和・洋のトップシェフとして活躍した料理長の久保田が生み出す京料理は、意外性と感動に満ちている。

料理はアート。平面ではなく3Dも料理の空間に取り込む斬新なアイデアに心惹かれる

夏は鮎。いけすから絞めたての稚鮎を食卓に。左は鮎取り篭を模しており、提供時は右のようにしていただける。新鮮な活きの良さをこのように表現しているのだ
「四季は海外にもあるが、料理の中で季節の情景を想起させられるのは日本だけではないでしょうか」そう語る氏の手がけるコースには京の四季が反映されている。それは和に固執しているわけでも、洋に傾倒しているわけでもなく、“あくまでも自然なバランスで”彼の経験値が存分に活かされているのだ。
一皿、一皿に驚きがある。情景が思い浮かぶ皿である。
物語性を感じるコースに仕上がった。

落ち着ける空間が心地よい睡眠へと誘う。朝は窓から差し込む朝日で目を覚まして
静かな寝室でぐっすりと眠ったら、なぜか腹ぺこの朝を迎えた。
上質な睡眠はほどよく体力を消耗するのだろう。
星のや京都では朝ご飯を部屋でいただくことができる。
まだ夢をみているかのように美しい窓越しの景色を見ながら、ふんだんな野菜がもりこまれた朝鍋を味わう。

理想の朝食。土地の野菜がふんだんに盛り込まれた和朝食は、その優しい味わいで、朝の身体にするするとしみ込んでくる
そこで気がつく。
景色だけが美しいんじゃない、この窓、障子、建物がそれをさらに美しく彩っているのだと。
障子からさす優しい朝日が心を落ち着かせるんだという発見もあった。

星のや京都の船着き場。大自然のスケールを感じて
星のや京都では通年、及び季節を通じて数々のアクティビティも用意されている。
夏だとプライベート鵜飼鑑賞船や、通年では着物体験、華道など、存分に京都を味わうことができる。

部屋で枕香作り体験も。自分の好みに合わせて調合した枕香はもちろん持ち帰ることができる
色々とアクティブに過ごすもいいが、1日は何もせずゆったりと川のせせらぎに心を投じ、ここでしか味わえない“陶酔体験”をむさぼるのもいいだろう。
星のや京都
所在地:〒616-0007 京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
アクセス:阪急嵐山駅より徒歩約10分、京都南ICより車で約30分
電話番号:0570-073-066(星野リゾート予約センター)
URL:https://hoshinoya.com
客室数:25室
チェクイン15:00~/チェックアウト~12:00