世界中の人にとって、この2020年は想像を絶する年になっている。
未だ猛威をふるい続ける新型コロナウイルスは、我々の健康や命だけでなく、すべての人の日常や心にまでその脅威を轟かせている。
誰もが少なからず不安やストレスを感じている今、心に少しの潤いを。
新連載、「LIFE IS A JOUNEY」では、冒険野郎が「旅」をテーマにした音楽や映画、本を紹介する。
ぜひ頭のなかで“バーチャル・トリップ”を楽しんでいただきたい。
この連載を通して、来る新たな世界に希望と冒険心をもって挑む“冒険野郎”が一人でも多く出現することを祈る。
まずは私、山本にとっての「旅」を感じるコンテンツをご紹介しよう。
Positive Reggae Vybz MIX by DJ INFLUENCE
旅に出たくなったり、自分の原点に立ち返りたくなったとき、youtubeでPositive Raggae Vybz MIX by DJ INFLUENCEを聴いて、愛する国、ジャマイカに想いを馳せる。
2012年にADVENTURE KINGを創刊してから、最初の長期取材がNY-ジャマイカ-セドナへの一ヶ月強の旅であり、中でも人生観が180度変わるほどの大きな衝撃を受けた国がジャマイカだった。
ジャマイカはレゲエの国と存じてはいたものの、ここまで「レゲエ」一色とは! と唸りたくなるほど、レゲエに溢れていた。ショッピングモールやレストランはもちろん、青空マーケットや普通の道路にもなぜか必ず巨大なスピーカーが設置され、爆音でレゲエが流れている。
スピーカーの周りには、老若男女が集まり、楽しそうに話をしたり、ただ地べたに座り込んだり……。
行き交う車も窓を全開にして爆音レゲエ。歩いているラスタマンたちもスピーカーを肩に担いで爆音レゲエ!
私たちはというと、取材として大使館のハイヤーに乗っていたのだが、そんな我々の車でも、ドライバーがラジオで最新のレゲエチューンを爆音で!
そういうわけで、それらが交差するとき、音が混ざってなかなかカオスな状況になり、レゲエをほぼ聴いたことのなかった私にとっては「ジャマイカの洗礼」を音楽で受けたのである。
最初こそ驚きのあまり固まってしまったものの、次第にレゲエの虜になってしまった。
本場で聴くレゲエは鳥肌が立つほどカッコイイ。セレクターもいいし、Deejayのジャマイカ人独特の厚みがあって温かい声と、カリブのリズムが溶け合ってヘブンリーなサウンドに昇華しているのだ。
ドレッドヘアーにラスタカラーのニット帽を被った、ボブ・マーリーのようなお兄さんやおじさん、カラフルな服に魅惑のヒップがセクシーなお姉さんたちが、太陽の光を浴びてレゲエのリズムに乗っているそのさまは、まさに「幸せ」そのものだった。
ストリートで目にした光景に、私はいままで「幸せ」の価値観を履き違えていたんだ、と気がつかされた。
東京の溢れる情報量、信じられないスピードで変化する日常に染まっていた当時の私と正反対の世界がジャマイカだった。どこか窮屈に感じていながらも、その枠に無理やり身を押し込んで、小さな枠の中でせめぎ合って生きてきた私は、ここにきて「大切なのはお金でもモノでも人の評価でもなく、『自分が幸せかどうか』なのだ」と気がつくことができた。
常に他者と比較・競争しながらの生活は本当はもう嫌だったんだ。でも嫌って言えなかったんだ。
「好きなこと、愛することを大切に生きていきたい」
知らず知らずのうちに自分に染み付いていた固定概念がジャマイカで一旦ニュートラルにリセットされた。
ジャマイカでは裸足で滝登りをしたり、馬に乗って(馬って泳げるんです)海を渡ったり、現地で仲良くなった子にパトワ語を教えてもらったり……心の底から幸せで充実した時間を過ごした。
私にとって、ジャマイカを感じるレゲエ音楽は、都会の生活に疲れたり、自分を見失いそうになったときに非常に助けになってくれる。これを聴けば瞬時にトリップして、ジャマイカで感じた「本当の幸せとはなにか」という私の原点の思考に戻れるのだ。
この連載をアドベンチャーキングにゆかりの深い次の三名にお渡しさせていただく。
創刊当初からずっと出演しつづけてくださり、海外ロケも快く応じてくれる俳優・レゲエDeejay 窪塚洋介氏。
長きにわたり日本の音楽界を牽引しつづける冒険野郎、INORAN氏。
2019年WEBにリニューアルした際の最初のトラベラー、柳楽優弥氏。
人生は旅であり、それを創造するのは他ならない我々自身だ。
どんな時も光をみつめて。
ともに未来を切り拓こう。
2020年5月吉日
編集長 山本真紀子
Profile : Makiko Yamamoto
旅と冒険をテーマにしたメディア「ADVENTURE KING」創刊、編集長。
趣味は瞑想、ヨガ、ワイン。最近はベジタリアンに傾倒している。