Interview, text: Makiko Yamamoto
Photo: Taro Washio
Video: Yuki Tanzawa
Q素晴らしい肉体をされていますが、元々体格は良かったんですか。
Aいえそうでもないです。でもスポーツは昔からずっと好きでしたね。サッカー、陸上、バレーボール、最終的にテニスを本格的にやることになって、16歳の時から実業団でテニスをやっていたのですが、当時はかなり細身でした。身長は今と同じで178cm、体重は60kg前半と、一般的にいわれる“ガリガリ体型”だったんです。
体重の経緯でいうと、今年34歳になるのですが、28歳までは60〜65kgくらいの体重でした。29歳で70kg前後になって、今現在は80kgです。僕がやっているボディビルに似た“フィジーク”という競技には減量期と増量期があるのですが、増量期だと88kgくらいまであげて、大会に出る時には76kgまで絞るといった感じです。
Qフィジークを始めたきっかけは?
A2013年に日本では初めてのボディコンテスト「ベストボディ・ジャパン」が開かれ、出場したのがキッカケです。もともと身体というものがすごく好きで、遡ると多分好きなアニメから始まったんだと思います。ドラゴンボールなどにでてくるキャラクターの身体がかっこいいなと思ったり、TV番組の「筋肉番付」のケイン・コスギさんや、室伏広治さんたちの身体にすごく憧れて。
正しい筋トレの方法を知らないながらも、自分が知っている腕立て伏せなんかをひたすらやっていた時代がありました。そんな感じだったので「ボディコンテストが出来た」というのが僕の中でとても嬉しくて、出場したんです。ただ、見よう見まねで身体を鍛えていて…圧倒的な知識不足だったので、初戦敗退に終わり、同時にそこが身体づくりの始まりでした。
Q元々細身だったとおっしゃっていましたよね。筋肉をつけるのは大変だったんじゃないですか。
Aそうですね、まず筋肉をつけるための知識が皆無でした。ものすごく筋トレを頑張るものの、栄養面が全くなってなくて。元々すごく少食なので1日1〜2食食べたら満足していたので、栄養が足りてなかったんです。初戦も身体は細いのに、浮腫みもすごくて、腹筋も割れていないという不完全な身体でスタートしました。
Q栄養面の大切さを思い知ったと。
Aはい。そこから勉強しまして、浮腫をとるためにすべき事なども。純粋に筋肉を付けるにはPFCのバランスが大切で、Protein(タンパク質)、Fat(脂質)、Carbohydrate(炭水化物)を徹底的に勉強して、身体作りに励みました。
Q細いのは体質や遺伝と思いがちですが、栄養とトレーニングで身体は変わるということですね。
Aそうですね。ちゃんとした知識とトレーニングの内容を把握していれば、身体は確実に変わります。僕はトレーニングではなく「練習」という言葉を使うんですけど、何事もいきなり上手に出来ることはなくて、練習を重ねて出来ていくと思うんです。
僕自身もトレーニングをしているときは練習している気持ちで取り組みます。例えばベンチプレスをするにも一般的には10回4セットとか回数とかセット数が決まってるパターンが多いんですけど、単にそういった回数をこなすだけでなく、理想のフォームでターゲットとなる筋肉に効いているかどうかなど、しっかり考えながらやるんです。
Q「練習」を続けた結果、見事優勝を手にされましたね。
A「ベストボディ・ジャパン」初出場では初戦敗退でしたが、悔しさと同時に、そこで勝っている人たちがすごくかっこ良くて、僕にとってはヒーローみたいな存在だったので、「ああなりたい」と思ったんです。そこで勉強して練習を重ねて…初めて優勝したのは初挑戦から3年後です。
Q3年あれば人は変わることができるんですね。
A結構努力はしました。一般的にはある程度スポーツとか筋トレの経験のある人は1年に多くて2kg増えると言われているんですけど、3年で6kg増やすように努力していたので、その努力が報われたかなと。
Q独学ですか?
Aはい。僕は英語が出来るので、アメリカの最先端のトレーニング方法を勉強したり。今は日本でもパーソナルトレーナーとして活動しているので、そのライセンス取るための勉強にもなって良かったです。
また、栄養学の資格を取るとともに、実践的に使えそうな知識は別に独学で習得していきました。
Qアメリカと日本のフィットネスシーンは、以前より大差なくなったかなと思いますが、イースンさんはどう感じますか。
Aちょうど昨年の12月にLAにいって、スポーツや筋トレなど現地ではどういったものが流行っているのかを見てきました。確かに日本はアメリカに近づいてきてるところは多いなと。
実際行って感じたのは、日本人の“マメさ”は栄養面とか筋トレ面でもすごく活きているなということです。アメリカ人が何かを説明するときって、結構大まかに説明するんですが、日本人の場合は細かく説明するから理解しやすい。
DNAで言えばアメリカ人の方が骨格が大きい分、身体が大きくなりやすいのは確かにあるかも知れませんが、アジア人ならではの骨格の細さを生かしたかっこいいシルエットというのもあると思います。
現に世界のフィジークシーンでも活躍しているアジア人選手が増えてきていて、昨年もプロが2人出ているので、これからがすごく楽しみです。
Qフィジークの世界に入って、心がけていることはありますか。
A自分のモットーとして”何かをする時は120%の力でやる”というのがありまして、やはり7~8割とかで止めてしまうと高みにいけない。自分の中でずっと一緒の状態が嫌で、必ず昨日の自分より今の自分の方がレベルアップしていられるように心がけているので、そのためには毎回120%の力を出せる努力は昔からスポーツを通して、体感してきました。120%の力を注がないと昨日の自分には勝てないと思ってやっています。
Qそんな中でも体調が良くなかったり疲れたりして、やめたいと思うときはないのでしょうか。
Aいっぱいあります。特に大会が近づいてくると、栄養面では摂取カロリーを下げるので元気がなくなってきて、トレーニング行く前に「今日は行きたくないな」と思うこともあります。そんなときはモチベーションアップの方法を探ります。例えばドラゴンボールをまた観て初心に返るとか、なりたい身体を眺めてモチベーションを上げていくとか。あとは行動しないと何も始まらないので、とりあえずジムに行って普段と違うことをやってみたり。それが意外と楽しくてモチベーションがあがることもあります。そうやって日々変化をつけながら頑張っていますね。
Q以前お話したときに「デカいだけではなく、動ける身体を目指したい」とおっしゃっていましたね。
Aはい。長年このフィジークという世界でやっていて、それに気がつきました。今まで僕は「どれだけ自分の身体に筋肉をつけていくか」にあまりにもフォーカスしすぎた結果、もともと好きだったダッシュとか、ジャンプをするとかいう“動く”ことをしていないなと気がついたんです。
僕の場合は体重が下がりやすいので有酸素運動をあまりやってこなかったんですよね。でも、この2年くらいは原点に返って、キックボクシングやダッシュ、ジャンプなど、アニマル的な動きも取り入れるようにしました。結果、メンタルヘルスにも良い影響があって、今の自分の身体は筋肉量が一番増えていると思います。これからは身体を大きくするだけでなくしっかりと、動かせる身体+α、もともと好きだったカッコイイ身体を同時進行でやっていきたいと思います。
Q今回ADVENTURE KING新たにスタートする連載「King’s Physique」では、自重メインのトレーニングを紹介してもらいますよね。トレーニングはどこでも出来るということですね。
A器具がなくてもトレーニングは可能です。例えば、忙しくて家で10分しかトレーニングの時間がとれない、出張先にジムがない、などのケースを想定して、部屋でできるトレーニングをご紹介したいと思っています。何もしないよりは動かした方が身体には絶対にいいですから。
器具を使わなくてもしっかりと身体を引き締めて、服やドレスやスーツカッコ良く着こなすことは可能なので、それをお伝えできればと。
Q今後挑戦したい冒険はありますか。
A筋肉への憧れは昔から変わらず死ぬまでずっとあると思っていますし、今やっているフィットネスも死ぬまでずっとやっていくと思っているので、そこを常にステップアップしていく気持ちを持ち続けたいです。
あとは常に知識や興味のアンテナを張りながら、自分がスポンジになった気持ちでどんどん吸収していきたいと思っています。
Ethan Schellin 「King’s Physique」Special Interview
——Ethan Yuta Schellin Profile——
イースン 裕太 シェレン
フィットネスモデル・パーソナルトレーナー
ACE GYM代表
ベストボディジャパン2014優勝
ADVENTURE KINGでは「King’s Physique」のでトレーニングを紹介。