INTERVIEW

明鏡止水な冒険野郎

Tenshin Nasukawa × Katsuyuki Seto

今号で13周年を迎える本誌にとって、どうしても実現したい企画があった。
コロナ禍以降、世界が明らかに二分した実感があり、それは実際に見て触って証明できるものではなく、なんとなくの「感覚」
ではっきり自覚できるものだった。ただ、人同士や物事などの惹かれあう引力だったり、退ける力の濃度が以前よりも濃くなり、
それは必然の流れとなって日々体感として訪れる。この「目に見えない力」をもっと敏感に感じ取り意識と結びつけることが
できれば、ヒトの脳は覚醒し、ネクストステージへと意識を持っていくことができるのではないか。
筆者のそんな仮説をすでに裏づけている 2 人の冒険野郎の対話がここに実現した。

細胞レベルで心身を極限まで磨き上げつづける無敵のソルジャー・那須川天心と、目に見えない微細な波動に着目し独自の
研究を続ける天才音響作家・瀬戸勝之の世紀の対談をご覧いただきたい。

Interview & Text : Makiko Yamamoto
Photo : Kenichi Muramatsu
Styling : Takuto Satoyama
Hair & Make-up : ShinYa

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目に見えないものを感じる力

−音響作家と格闘家、一見交わることのなさそうなお二人ですが、出会いのきっかけを教えてください。

瀬戸勝之(以下:瀬戸) 整体や気功、催眠をやっている方
と渋谷のクラブでイベントをやったことがあって。その繋がりで
2024年の1月頃、天心君がうちのスタジオに来てくれたんです。

那須川天心(以下:那須川) だから出会ってからの期間は
浅いです。

瀬戸 そうなんだよ。親友みたいになってるけど(笑)。

那須川 初めてお会いした時に「これは来たな」と。ずっと
昔から繋がっている感じがします。

瀬戸 天心君は強いしカリスマ性もあるけど、単純に人として
優しいんですよ。育ちやバックグラウンド云々ではなく、色々な
経験を経て人の痛みがわかる奥行きのある優しさ。 東京の
コンクリートジャングルで色々なトレンドを追いかけていると、
不意にドライになる瞬間がありますよね。なのにこれほどまで
に優しさを貫き通す人は珍しい。

那須川 僕はあまり人と関わらないタイプですが、瀬戸さんは
初めて会って話した時から「子ども心と愛がある人だな」と。か
なり年上なのに同じ目線で話せるんですよ。あと追求の仕方が
「なんで?」と言う幼稚園児みたい(笑)。それが自分と同じ。

−瀬戸さんが音響に目覚めたきっかけをおしえてください。

瀬戸 最初はダンスだったんです。ダンサーとして音を体で
体感して表現するところから魅了されて、海外で DJをやったり
していました。その後、音楽制作がアナログからデジタルに
移行する時期があり、ハイスペックな技術を使えば PC 上で
超音波を扱えるようになったんですね。ただ耳に聴こえない
音楽なんて、当時ビジネスになり得ませんでした。
僕が興味を持ったのは、これが流行るかよりも人体や脳にどう
影響するかということ。
それで、試しに超音波が出るであろうパワースポットに行ったり、
イルカと泳いで超音波を採取して測定してみたら、数値的な
結果が出たんです。そこから「この数値が尖った部分だけを人
体に与えたらどうなるのか」という領域への興味が湧いてきて。
「この“耳に聴こえない音”は誰かと差を付けたり、マウンティ
ングする道具ではなく、人と繋がる技術になるかもしれない」
と。それが超音波を研究する入口でした。
実際、殺傷能力はないですが、アメリカはテロ対策として保有
しているのが 100メートル先へ「キーン」という耳を塞いでも
我慢できないような周波数の音を出す、距離音響発生装置
『LRAD(Long Range Acoustic Device)』。これは軍事
利用されていますね。

−天心さんは相手とスパーリングするより自分と向き合う瞑想的トレーニングをされていますよね。

精神鍛錬に重きを置いている印象です。

那須川 以前は話が合わなかったり、ネガティブだったり、
合わないと感じることが多くて他人とコミュニケーションを取る
ことが少なかったんです。それに格闘技は己との闘いですから
「自分に負けなければいい」と考えていましたね。でも試合で
は観客も見ているし、場を飲み込まないといけない。だから誰
とでも会話を合わせられるように、意識するようになりました。
今は苦手な人がいないというか、波長をコントロールできるんで
す。いわば「無敵モード」なのかもしれません(笑)。
人間は自分の好きなものに依存してしまうので、アウェイな状況
をたくさん経験することが大事だと思います。慣れない場所に
飛び込む、普段行かない場所に行く、見たことのないものを
見るとか。多くの経験で表面だけでなく内面の強さが出てくる気
がします。僕は 25 歳ですから、まだまだですけど日々「面白い
ことはないかな?」という探求心を持ちながら生きています。

瀬戸 僕と天心君の場合はフィールドが違うんです。彼はアイ
コンだから、確実にコメント欄に意見が出てくる。「もっとこう倒
したらいいかな」と考えているかもしれないし、プレッシャーも大
きいでしょうね。僕は黒子の方から出てきたのもあり、キャスティ
ングする側。プレイヤー側でエンタテインメントする訳ではない。

那須川 やっていることが正反対ですよね。僕は表に出て、
勝之さんは裏方。でも目指す場所は一緒じゃないですか。
だからこそ合うのかなとも思います。

瀬戸 結果から見たらそうだけど、天心君みたいに「ベルトを
獲る」とか「世界一になる」といった目標が僕にはありません。
音響作家は競技ではないので。

那須川 では目的は何ですか?

瀬戸 自分の興味関心に従っているだけですね。そのなかで
誰かに必要とされることがあるなら、それをやりたい。興味を追
求しているだけ。これこそが無敵だと思っています。「苦労や努
力が美学だ」という話もあるのはわかります。でも、それは当た
り前の話。興味に向き合うことで今の仕事を継続できている気
がします。飽きたら辞めるか休む、それくらいの気持ちですよ。

那須川 僕も一緒です。ある程度の目標はありますが、絶
対的なゴールはない。目標や夢もありません。周りを納得さ
せるためにベルトを獲るつもりではいますが、手にしたところで
「だから何?」という感じ。それが満足にはなりません。「強さ」
の概念が見えないものである以上、格闘技に限界はないじゃ
ないですか。だから5 歳から20 年間やっていても飽きない。

瀬戸 もしベルトを獲って急に興味がなくなったら?

那須川 興味がなくなったからこそ空手からキックボクシング、
総合格闘技と転向して、今ボクシングをしています。その後も
何かしら追求していくんじゃないかなと。

瀬戸 神童と呼ばれて空手の大会で全国優勝した時はどう
感じた?

那須川 嬉しかったですよ。でも、「勝った。よし、次いこう」
みたいな。

瀬戸 王者になったら、次に「舐められたらいけない」とか
別のプレッシャーがあるじゃないですか。

那須川 プレッシャーはないですよ。とにかく「チャンピオン
ベルトがあるからすげえ」と思われるのが嫌です。持ってなく
ても俺が一番(笑)。それに自分の 100%を出して負けたら、
それは仕方ないですし。

瀬戸 精神的に心が折れそうになる時は?

那須川 まったくないですね。今はもう這い上がったり、努
力する時代じゃないと思うんです。「努力」と考えている時点
で努力ではないというか。僕のモットーは辛い部分を見せない
こと。ドキュメンタリーでも「きつくないですか?」と聞かれますが
「きつくないです」と答えます。好きだからこそ追求できるし、
当たり前にできる。

瀬戸 昨今 SNS など個人から発信できるツールが増えた
反面で、若い子は何事にもエフェクトが入っている気がする
んです。顔も加工できるし、テキストの言い回しでマウントも
できる……。素材を追求することが本当の気持ちよさだけど、
その手前に努力せず補える技術がある。素材で勝負しないと
いうか。
だから今後「感覚」という言葉が不必要になる可能性もあり
ますね。既に GPT-4 などの生成 AI があれば、会話のアー
カイブを使って彼女よりも恋人っぽく相談に乗ってくれたり、
自分好みの返事をしてくれたりするじゃないですか。
そんな世界で感覚を磨くのは難しいでしょう。とにかく目に見
えるものが中心の時代になっていくので、そうではない価値を
自分たちの仕事で表現していきたいですね

画像や文章ではつたわらない「振動」が描く紋様

−天心さんは今の若者をみて感じることはありますか?

那須川 自然体な人が減った気がします。何かに乗せて自
分を発信する傾向が強い。それで本当によいのかはわかりま
せんが、いつか爆発するんじゃないかなと思ってます。僕は
友達と羽釜を炊いて一緒にご飯を食べるのが好きですが、その
幸せは現実にみんなで会わないと感じられません。
それを発信するとSNS では「何やってるの?」とか「馬鹿
じゃないの?」という批判するコメントが多いんですよね。ネガ
ティブな言葉で病んでしまう芸能人もいますけど、フィジカルや
精神を大事に生きられる人は先の人生も豊かになるんじゃない
かな。極論を言えば「病むなら辞めろ」って思います。みんな
それができないループにハマっている。

瀬戸 過去にはブログがあって、mixi やフェイスブックが登場
しましたが、今強いのは X やインスタグラム。最初はテキスト
だけだとディベートが始まるので、写真中心の方が平和なの
かもしれません。でもその世界はコピペやリプライに左右され、
感覚的な考えとは無縁ですね。
そもそも僕は SNSをやってないんですよ。たぶんそこに 10 年
以上前から気付いていて、自分を守るために手を付けなかった
んだと思います。一旦足を入れてしまうと抜け出せませんし、
そのなかで自我を形成してしまうとキツいでしょうね。そこで新し
い表現をして次のステージに行く人もいるかもしれませんけど。

那須川 切り抜き動画もそうですよね。思いや音声ではなく
文字を読んだ解釈がすべて。それはネガティブな方向に捉えら
れがちだから、揉めごとが起こる。だから音声でしか投稿でき
ない X みたいなアプリがあったら面白いのかも。

瀬戸 面白いね。テキストで読むのと、声のメロディやトーンで
聞くのとは大きく意味が変わってきますから。そういうアプリ
自分で作ったらいいよ(笑)。

那須川 (笑)。

瀬戸 釈迦も「仏法を文字ベースで伝えようとしたがゆえに
弟子が多くなりすぎた」と言われますね。逆に今も寺で声を出す
のは文字だけで伝わらないバイブス、「理由はわからないけど
全員で声を出して言う」という協調で悟りに近づける、という
意味なのかなと個人的には思っています。

那須川 そうすると解釈も変わってきますよね。

瀬戸 声に出すと客観的になれるんです。あと僧侶の声って
科学的にも脳に気持ちいいサウンドなんですよ。昔の人はデータ
ではなく本能でそれを知っていた。もっと感覚で物事を捉えていた
んですね。つまり僕たちは最先端の技術で過去の神秘を解いて
いるんです。例えばピラミッドもそう。僕らは不可能だと考えてしま
うけど、過去の想像力だったら当たり前にできたのかもしれない。

−インドのマントラも文字ではなくて音ベースで構成されているといわれていますよね。

瀬戸 僕らの耳に聴こえない音は「オシロスコープ」という
デジタル技術で波形として見ます。でも音の出るものに金属板
に塩や細かい砂を乗せると、アナログで見ることも可能なんで
すね。それで周波数を上げていく。すると超音波の気持ちい
い帯域で出てくるのが曼荼羅。
天皇家の紋章「十六八重表菊」も僕の持っている 11 種類の
超音波を当てると同じ模様が出てきます。だとすると、先人たち
はどうして曼荼羅を思い付いたのでしょうね。前例を知らない、
コピペもできない人たちがいかに崇高か。そこでリスペクトが
湧いてくる。
(参考:https://youtu.be/1yaqUI4b974)

那須川 素晴らしいですね。

瀬戸 だから「そこに何かがあるはずだ」と思って続けている
のだと思います。

那須川 脳みその使い方が違うんだろうなと思います。僕ら
は脳が体のスペックを維持してると何となく思っているじゃない
ですか。でも某有名大学による最近の論文を読むと心臓は
心臓、腸は腸で意識があるらしいんです。それが今の科学。
心拍数も上下した後に脳が気付く。人間に限らず、動物って
腸から出てきますしね。 周波数の違う細菌が集まっている。
みんな脳の領域を開こうとばかりしますが、腸に意識すると次
の何かが見つかるかもしれない。

−それは格闘技の世界にも応用できる?

那須川 どんなに脳が覚醒しても、体がついてこないとダメで
すね。スピリチュアルなことを勉強している人もいますが、それ
だけだとフワフワしてしまう。やっぱり体を鍛えたり、呼吸や
食べ物に気を付けたりすることで、脳が整理されてゾーンに
入りやすくなるのかなと思っています。

瀬戸 天心君は食事にも気を遣ってるよね。

那須川 なるべく添加物を入れないようにしていますね。
あとは発酵食品。食事のタイミングも「この時間に食べよう」
とかではなく、食べたい時に食べていますし。ある程度のセオ
リーはありますが、ホメオスタシスで体が慣れさせないようにし
ている感じ。

瀬戸 コーラとかは飲む?

那須川 飲みますよ。トレーニングした後の糖質は大事なので。

瀬戸 闘う時、対戦相手の思念や周波数に影響されたりしま
す?

那須川 リングの時も、計量の時もありますね。それに取り
込まれずに自分のフィールドに持ち込むことが大事。そういう
チューニングは意識してできますね。

自分を信じる、自分で考える―試される時代を生き抜く術

−現代って政治も経済も不安定。ストレス社会をサバイブするにはどうしたらいいのでしょうか。

瀬戸 「コロナで人が死ぬ」と騒がれた時の対策がワクチン
だったじゃないですか。それを生理的に拒否した人の考えって
興味深いですよね。考え方って家庭環境や年齢に左右される
のは当然ですが、あの「何か違うな」という感覚って理屈じゃ
ない。
DNA の叫びだと思うんですよ。その“拒否感”に意味がある
と考えないと、政府や医師に言われた通りの薬を入れるような
洗脳に繋がる可能性がある。コンプライアンス的にそういう
危険性を言いづらい今の世の中では、自分にどの薬が合うの
かという判断や信念を学校では教えてくれません。
そういう感覚はアートやカリスマ性のある人たちが色々な角度で
発表しないといけない。多様な意見があると知らないと人々は
言われるがまま、みんな同じような性格になってしまう気がして
います。それにワクチンや薬はいつ副反応が出るかもわからな
いですから。

−自分で判断しているように見えて、判断していない社会になっている気がします。

瀬戸 今後「自分が判断する」という精神が重要になると
思いますよ。自力で調べるよりも ChatGPT などの生成 AI に
問いかけて、自分で選択することなく答えを得られるようになる
と、テクノロジーの奴隷になる人が増えるでしょう。だからこそ
アーティストや格闘家、クリエイターによる「自分はこう思う」
「自分はこうする」と試行錯誤することが価値になるのかなと。

那須川 コロナ禍で感じたのは「時代に試されているな」と
いうこと。僕は薬やワクチンに関しては「自分に聞け」と思い
ます。あとは誰を信じるか。推す人を間違えると大変なことに
なってしまうので。
「誰かが言っていたから大丈夫」ではなく、「誰かが言っていた
けど本当にそうなのか?」と疑うフィルターを持ってもらいたい。
そうすれば人のせいにすることはなくなります。

瀬戸 「自信」って、社会的に認められたり、外的な評価で
つくと考えられがち。でも、社会的な地位を失ったら自信もなく
すのか、といったらどうでしょう。28 歳の時に某ハリウッド監督
と「プライドとは何なのか?」という話をしたとき、彼は「結果
に関係なく自分を信じることが本来の自信だ」と話していまし
た。自信とは読んで字のごとく「自分を信じる」なんです。

−自分を信じること、これはアドベンチャーキングも誌面を通して伝えてきたことです。 心身の鍛錬とともに、意識的に精神を「覚醒」していくことも大事だなと。「覚醒」これは今回のインタビューの大テーマなのですが。

瀬戸 漫画『ドラゴンボール』のストーリーって、鍛えて強い
人と戦って、負けて死にかけて、また強くなって勝っての繰り
返し。そんなストーリーの中盤で主人公・孫悟空は「スーパー
サイヤ人」に覚醒するんですね。さらに後半では時間が 360
倍早く進む「精神と時の部屋」で修業し、その状態を維持し
続けられるようにもなる。これが究極だと思うんですよ。

那須川 ガチで真理だなと思います。アニメは昔から大好き
で、嘘だと感じたことがありません。『NARUTO』などもリアリ
ティを感じるんですよ。この歳で色々なスペシャリストから知識
を得てから、改めて漫画を見るとヤバいなと(笑)。

瀬戸 だからずっと覚醒し続けている、ゾーンに入り続けるの
が究極。その状態だと感情に振り回されないし強いよね。

−日本の漫画やアニメは真理を突いていたんですね。

瀬戸 もともとアイドル文化って日本が発祥なのですが、いま
は韓国の方が世界的に強くて追い抜かれてしまいました。もち
ろんマーケティングや政府の補助金も大きいのですが、僕が
知人と話して気付いた結論は「いまの日本には漫画や SF の
世界を本気で作ろうという人が少なくなった」ということ。
アメリカや韓国の方がフィクションを現実化させることに信念を
持っている人が多い。それに引き換え僕たち日本人は、先人
たちの想像力で『鉄腕アトム』や『ドラえもん』などの国民
的 SF アニメが生まれたのにも関わらず、いまでは“現実的な
感覚”に追いこめられている。

−一体どうしてそうなったのでしょう。

瀬戸 これは一説によると日本語にひらがな、カタカナ、漢字
があるのが原因だそうです。
英語のアルファベットのように単一の表記だけの言語と比較
すると、日本語は物事の捉え方がたくさんある。それゆえなん
でもアリになってしまって、フィクションを現実化させる執念や
信念が薄まってしまったのではないかと。だから、僕らのような
ロマンを追いかけるような人が増えれば経済は上がるんです。

那須川 今の人はものわかりが良すぎますよね。

瀬戸 日本人は優秀なんですよ。 神道を大切にしながら、
人が亡くなったらお寺で葬式、結婚式はキリスト教など色々な
角度の見方を持っているんです。色々解釈ができる点では愛
が深いのですが、一方でひとつのことを信じるパワーが弱くなっ
ているんじゃないかな。その点、天心君は両方をやっている気
がする。

那須川 バランスですね。僕は世の中に悪いものはないと
考えているんですよ。全ては考え方次第。「悪いと言われてい
ることでも、解釈でよくしてしまえばいいじゃん」と思う。「柳
のようにぶつかり合わない」というのが自分のテーマです。
もめごとが嫌いなので。

瀬戸 そう言いながらも人と殴り合う仕事をしているのがすごい
(笑)。

那須川 喧嘩が一番面白くないですから(笑)。僕は格闘家
なので普通の人より強いとは思いますが、物理的なパワーなん
て意味がない。本当の強さは「優しさ」だと思っているので。

瀬戸 それが覚醒なんじゃないですか。最後に勝つヒーロー
も愛だし。『北斗の拳』や『ドラゴンボール』、『NARUTO』
もそう。

−覚醒とは、 愛や優しさ、 人間の本質に気がつくことなのかもしれないですね。

瀬戸 感動って「感じて動く」と書きますよね。気持ちいい
ことだけを感じているよりも、ストレスがあるからこそ突き抜けら
れると思うんです。悟空が最初からスーパーサイヤ人になった
ら興ざめじゃないですか。プロセスやドラマを無視してはいけな
いんです。
だから「覚醒の超音波」は到達を助けるための補助。困って
いる人がいたら使いますが、本来は自分で掴むものだと思うん
ですね。だから販売もレンタルもしません。

那須川 自分の準備ができていないままで覚醒したとて何もで
きないですよね。日々コツコツ自分を磨き続ける。毎日が模索
ですから。自力で会得してこそ器が完成するのだと思います。

感覚を研ぎ澄ませ、自己を覚醒する。
情報過多、ノイズだらけのこの世の中で我々にもっとも必要な“意識”であることがこの対談で証明された。だがしかし、最先端技術を駆使しながら我々が求めているこの“意識”の領域や“覚醒”の感覚は人間が本来有していた力であり、人類の歴史を経て失われた能力なのであろうと考える。
この先、人類はどこを目指して帆を張るのであろう。いずれにしても、自分の心の声と感覚を頼りに己の力で世界を航海しつづけるだけなのだ。愛と優しさをもって。

瀬戸 勝之
3D サウンド デザイナー / プロデューサー。 株式会社 studio SpaceLab
代表取締役。360°の音声再生領域を活かし、聴覚のみで映像を連想させる
『3D MUSIC』という新たな音楽ジャンルを確立。2017 年、未来型花火
エンタテインメント「STAR ISLAND」の演出を手掛け「経済産業省マッチング・
アワード 2017」の審査員特別賞を受賞。

 

那須川 天心
1998 年 8 月 18 日生まれ、千葉県松戸市出身。
史上最年少 16 歳で RISE のバンタム級王座を獲得。2014 年にキックボク
サーとして RISE でプロデビュー。天才的な格闘センスで「神童」「キックボ
クシング史上最高の天才」などと称されている日本を代表する格闘家のひとり。
2022 年 3月にキックボクシングを引退、ボクシングへの転向。以後 5 戦全勝。
WBO アジアパシフィック・バンタム級 王座決定戦、タイトル獲得成功。(当時)

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