INTERVIEW

高材疾足な味の匠

Hisashi Udatsu

日本の誇り、『鮨』の可能性に挑戦し続ける江戸前鮨の匠、宇田津 久。世界で唯一の『鮨×プレミアムテキーラ クラセアスール』というペアリングを見事に至高の体験へと昇華させた素晴らしき表現者、宇田津氏が語る最高の鮨体験とは。

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高材疾足な味の匠

Hisashi Udatsu

日本の誇り、『鮨』の可能性に挑戦し続ける江戸前鮨の匠、宇田津 久。世界で唯一の『鮨×プレミアムテキーラ クラセアスール』というペアリングを見事に至高の体験へと昇華させた素晴らしき表現者、宇田津氏が語る最高の鮨体験とは。

空間づくりも『鮨体験』の一つ

ADVENTURE KING (以下:AK)

『宇田津 鮨』さんといえば、「アート×お鮨」という印象があります。そのきっかけを教えてください。

宇田津 久(以下:宇田津)

そうですね。僕はあまり口数が多い方ではなく、お客様には美味しいお寿司を食べていただきたい、それが一番願っていることです。ただ、せっかく足を運んできていただくのであれば、特別な空間もご用意したい。他にはないような、ここでしか体験できないことを考えたときに、アートを飾ることで目でも楽しんでいただいたり、音楽はジャズを流して、心地よい空間づくりを心がけています。目で見ても楽しい、食べても楽しいし、音もまた楽しみの一つという。また、お鮨って音がないように思うかもしれませんが、目の前に座っていただくと包丁を使う音やシャリを握る音など微細な音もあるんです。ぜひカウンターではそういう耳の楽しさも味わってもらえたらなと思っています。

AK

まさに五感が満足するお鮨ということですね。
さらにユニークなのが、プレミアムテキーラブランド『クラセアスール』とのペアリングを提案されていますよね。世界で唯一だと思うのですが、お鮨との相性はいかがでしょうか。

宇田津

テキーラペアリングメニューをご覧になったお客様は大体驚かれますね。しかもクラセアスールのテキーラということで余計にインパクトが強い。味わいのバリエーションがあるクラセアスールだからこそできるペアリングだと思います。
野菜を使った料理には熟成なしの透き通った味わいが特徴のプラタを、8ヶ月熟成のレポサドは割と何にでも合わせやすく、特に雲丹とレポサドのマリアージュは素晴らしい。穴子など味のしっかりした品にはアニェホ、小肌など酸味があるものにはゴールドを。テキーラ愛好家のお客様には玉子とウルトラを合わせてご提供することもあります。
とはいえ、我々もまだペアリングの可能性を試行錯誤中なので、お客様の反応を見ながらこれからも色々と試していく予定です。

AK

全ラインナップを通して、知的でエレガントな味わいの『クラセアスール』だからこそ、なんでしょうね。

宇田津

そうですね、『クラセアスール』と出会う前は鮨とテキーラのペアリングなんて考えもしませんでした。今他のテキーラを飲んでみてもやっぱり『クラセアスール』だからこそ、改めて実感しますね。味わい、香り、舌触り…全然違いますよね。料理と一緒で、作ることに対してのこだわりの深さが『クラセアスール』からは伝わってくるんですよね。

 

AK

ご自身ではどういう召し上がり方が一番お好きですか?

 

宇田津

やっぱり雲丹とレポサドが一番好きですね。うちが仕入れている雲丹との相性がいいというのもあるのですが、さらにうちでは雲丹とシャリの間に素揚げした海苔を挟んでいるんです。油分と相性のいい雲丹にレポサドが入ってくるので、よりクリーミーさが伝わるなと思っています。僕自身お酒は強くないのですが、仮にお客さんとして来て、店主がこういう提案をしてくれたら迷わず頼むと思います。それくらい相性がいい。

AK

味の組み合わせは奥が深いですよね。宇田津さんはアメリカ、香港と海外展開をされていますが、日本の代名詞『鮨』という看板を背負っての海外挑戦、いかがでしょうか。

宇田津

まだスタートして一年も経っていないのですが、一番感じているのは味覚が全く違うなということです。日本で美味しいと言われているものが、向こうでは全く受け入れられないことも多く、現地の方がどういったものを好まれるのかをリサーチした上でメニューを構成するようにしています。もちろん『宇田津 鮨』を現地でもしっかり表現するというのはベースにありつつ、ですけれど。

 

AK

香港とニューヨークでも好みが違うものなんですね。

宇田津

そうですね。香港の方が日本人と味覚が近いかなという印象があります。ニューヨークはもっとはっきりした味が好きですね。アメリカで受けたもの日本に取り入れようとすると「海外の人に向けた鮨だね」って思われちゃう、不思議というか面白いですよね。

AK

考えてみたら海外の『宇田津 鮨』でしか食べられないメニューがあるってことですよね。『宇田津 鮨』きっかけで海外旅行をする、なんて人も出てくるかもしれないですね。

 

宇田津

逆にいえばそういうことですね。例えばアメリカだと脂の乗った魚の炙り系や揚げ物が人気です。揚げ物は自家製タルタルソースとともに提供しています。香港ではお出汁を好まれる方が多く、今はキンキだけでとった出汁を使ってお椀仕立てにしたりなど、現地に合わせたメニューをだしていますね。ですから、ぜひ海外店舗へも足を運んでいただき、味の違いを体感していただきたいですね。

AK

最後に、宇田津さんご自身にとっての今後の冒険を教えていただけますか。

宇田津

冒険と言えるのかどうかはわかりませんが、さまざまな食のジャンルがある中で、私はお鮨ひとつに対する工夫をもっと追求していきたいと思っています。例えば、雲丹には食感を加えるとか、エビは温かいものと冷たいものの温度差で変化を出したり、そういうひとつひとつのお鮨に一手間を加えていきたい。お鮨ってたくさん数が出ますが、きっちり全てに対して真摯に向き合っていきたいなと思っています。

鮨の伝統を大切にしつつ、斬新さとさらなる感動を加えて日本と世界に提案しつづける『宇田津 鮨』のこれからがますます楽しみでならない。

プロフィール
宇田津 久
東京都国立市出身。高校卒業後、神田の鮨屋、銀座の鮨屋、西麻布の鮨屋で修業し、16年目の2019年に『宇田津 鮨』をオープン。2023年ミシュラン一つ星獲得。

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