東ヨーロッパ、バルカン半島に位置するクロアチア。
海を挟んでイタリアに面し、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビアと接する歴史深い国である。
そこで目にしたのは昔ながらのライフスタイルがいまも息づく古き良き地中海の暮らし。
その美しい街並と住まう人々に旅人はクロアチアに“第二の故郷“を感じることだろう。
郷愁のクロアチアを探る旅へ、さぁ出発だ。
クロアチア地方の著名人が連なったストリートアート。手前はクロアチア・オパティヤ出身の偉大な科学者レオ・スターンバック。
クロアチアの地図はいる(Zagreb/Pag/Buzet/Opatija/Samobor/Hum/Sibenik/Pula/Komiza/Motovun)
Photo: Hiromichi Matono
Text: Makiko Yamamoto
DAYTIME IN THE CITY
瑞々しさを讃えた昼下がり
エネルギーに満ちた自然、歴史を感じる石畳の街並。
どこを切り取っても美しく絵になるクロアチア市街をあるけば、まるでおとぎ話に迷い込んだかのような気持になるだろう。
街をのんびり歩き、街に溶けこむ・・・そういう旅の楽しみ方を叶えてくれるのがこの国だ。
何気なく建っているカフェやパン屋、それら建造物ははるか昔からずっとそこで人々のドラマを見守ってきた。時の経過をにおわせながらもどこか新しく”今”を築いている。
過去と現在が美しく調和しているから、初めて訪れたものも親しみを感じることができる。
あてもなく街を彷徨い、目に映るものをしっかりと記憶していく作業。
これぞ旅の醍醐味。
観光地をせっせと巡るのもいいが、こうして路に佇み人の往来を眺め、時に身を委ねるほうがよほどプレシャスな過ごし方ではないだろうか。
TWILIGHT BY A HARBOR
物語を紡ぐひととき
昼と夜の狭間のトワイライトタイム。
旅人は一日の終わりを予感してどこかそわそわ、落ち着かない気持ちに包まれる。
ふと辺りを見渡すと、家路を急ぐ家族やディナータイムを待ちわびるカップル、夕陽を肴にグラスを傾ける人が瞳に飛び込んできた。
今宵もさまざまなドラマが生まれる。黄昏時は新たな物語を紡ぐまでのモラトリアム。
人の数だけストーリーがある。それを実感する貴重なひとときだった。
PRAY IN THE CATHEDRAL
清らかな空間で心を洗う
黄金色に輝くサグレブの大聖堂。
ステンドグラスのみの仄暗さは神聖な場所にさらなる奥ゆきをもたらす。
言葉を発するものは誰一人としていない。
諸手を合わせ瞼を閉じる。神との対話は自分との対話でもある。
ざわついた脳内を一つ一つ均していく作業、これは一つのメディテーションであり、しばしば我々にとって最も大切な行事だ。
「祈り」を通して願いを叶えてもらおうとしてはならない。
「祈り」を通してすべきことは、自分が生を受けた意味を神に問い、その意味をどうやって社会にリフレクションしていくかを考えることなのだ。
bon appétit
クロアチアの宝石
旅のとある日。トリュフハントへと山へ繰り出した。
トリュフの名産地、クロアチア、モトヴンでは犬を使ってトリュフを掘りあてる。
採りたてのトリュフをもってキッチンへ。
トリュフを合わせるならシンプルな料理に限る。そこにバターやチーズなどの乳製品を合わせれば至極の一皿の完成だ。
トリュフをオリーブオイルに漬けたトリュフオイル、刻んだブラックオリーブにトリュフを合わせたトリュフペースト、バターにトリュフを練り込んだトリュフバター・・・地中海の恵みと人々の叡智はこれほどまでにゴージャスな食卓を創りあげるのだ。
FACES IN CROATIA
愛に溢れた国民
素朴で少しシャイなクロアチアの人々。
自ら積極的に話かけてくることはないが、少し言葉を交わせばとたんに饒舌になり、まるで家族のように親しみをこめて接してくれる愛に溢れた国民だ。
地域を愛し自分たちの生活を愛すること。人生において本当に大切なものが何なのか。
物心ついたころから知らず知らずのうちにそれを理解し、満たされている。
そんな内面が、彼らの横顔には滲みでていた。