Chamberí地区に2025年夏にオープンしたEMiは、シェフ Rubén Hernández Mosqueroというひとりの料理人の旅と感性が結晶したレストランだ。Mosqueroはエストレマドゥーラ出身の料理人で、ここ数年で急速に注目を集める存在だ。彼はキャリアの大部分を北欧のNoma(コペンハーゲン)、Geranium(同じくコペンハーゲン)、Azurmendi(スペイン・バスク)、Minibar by José Andrés(ワシントン)、Atomix(ニューヨーク)といった世界屈指の厨房で過ごし、その技術と感覚を自らの言語として積み上げてきた。
マドリード中心部から車で約1時間の街、ValdemorilloにあるLa Casa de Manolo Francoは、自然と土地の表現の可能性を問い続けるレストランである。シェフのManu Francoは、もともとジャーナリストとしてFormula 1レースの取材に携わっていた経歴を持つという異色の経歴の持ち主だ。そして故郷であったこの地に戻り、家族が営んでいた元々のバルを再構築する形で料理の道へ転じたという。
その物語性こそが、La Casa de Manolo Francoを語るうえでの核である。彼の料理は、郊外の自然(シエラ・デ・グアダラマ山麓)の素材を中心に、羊やイベリコの肉、そこに生育するタイムやラベンダーといった香草を取り入れて構成される。料理の根底には、土地と季節の変化をあるがままに皿へ落とし込むという哲学がある。
Manu Francoの背景は、単なる料理人ではなく、取材者として世界を見つめてきた視線が料理にも反映されている点で興味深い。食材や景色、地域社会、そして自身の物語が料理のテクスチャーや味覚構造へと変換され、強烈な現場感を持つ。そこに「都市的な料理観」とは異なる、場所固有の詩情とリアリティがある。
EMiとLa Casa de Manolo Francoは、一見すると対照的な存在に見える。ひとつは世界の名厨房で鍛えられた視座を持ち込み、都市の中心で洗練された表現を示す。もうひとつは、郊外というフィールドで素材と記憶をつなぎ直す。しかし、共通するのは、ガストロノミーを単なる味覚の組み合わせとしてではなく、物語と場所性として再構築するという姿勢。