INTERVIEW

Kaito Yoshimura

ADVENTURE KINGと縁の深い俳優、吉村界人。2016年に表紙を飾り、2019年には若手クリエイターたちとの動画&ウェブ記事連載「Man In The Mirror」で“表現”を追求、そして今回8年越しに再び表紙に登場することとなった。その間様々な扉を開いてきた彼は“今”何を考えているのだろう。表現から未来のことまで、今の吉村界人を紐解いていこう。

Interview, text: Makiko Yamamoto
Photo: Kenichi Muramatsu
Styling: Takuto Satoyama

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――最初に会ったのが26歳の時。映画『いいにおいのする映画』のプロモーションでしたね。繊細なキャラクターだなという印象だったのを覚えています。現在は俳優としてどういった心境で作品に臨んでいますか?

吉村界人(以下、吉村):あまり考えずにアウトプットしている感じですね。社会に貢献したいとか世界を変えたいとか、今の自分にそんな大それたことができるとは思っていませんし。

――俳優業はもう10年以上になりますね。継続して活躍されている秘訣はあるのでしょうか。

吉村:具体的にアカデミー賞を獲りたいとか、月9の主演や朝ドラに出たいという目標を設定しているわけではなく、いただいた役を正拳突きで殴っていくというか(笑)。自分に投げられた球を、常にホームランを狙ってバットを振るしかないという感じです。

本当はボソボソ話す暗い役をやりたいのですが、それよりも自分の好みと相反する役の方が周囲の評判がいいですね。この3年くらい感じていることなのですが、自分の志向と逆の方がいいのかなと感じています。逆に自分がいいと思った作品の評判はあまり反響が少なかったりします。

 

――最近だと、Netflixドラマ『地面師』で、ひときわ存在感を放っていましたよね。

吉村:いい演技ができたとは1ミリも思えず、自分の演技を見たくないので試写も途中で帰ってしまいました。でも割といろんな人から好評価をいただいていて。なぜなんでしょうね……。

――最初会った時から感じていましたが、吉村さんってどこか孤高の存在という感じがありますよね。

吉村:多分、芸能界にいる自分にギャップを感じてしまっていたんだと思います。いまだにこの世界って、どこか自分には付いていけない部分もあって。必ずしも居心地がいい訳でもないですし。もちろんこれからも頑張り続けますが(笑)。それに、ドラマや映画の撮影中に楽しさを感じて笑顔で帰る日は、1年に1回あるかどうか。

――演技の出来が気になって、ということですか。そのモヤモヤをどうやって解決しているんでしょうか。

吉村:そうです。別に「今日も嫌だったな」というような、ネガティブな意味ではないんですけど。基本的にその気持ちを抱えたまま現場を後にする。友人に話すときもありますけど、だいたい部屋で天井を見つめたり。あとは絵を描く。絵みたいに、評価されてもされなくても関係ない、と思えるものは楽しかったりするんです。

――絵と言えば、吉村さんの絵って最近トーンが変わりましたよね。色彩がシンプルになったような。

吉村:それは母の影響がある気がします。いつもはあまり僕に干渉しないんですけど、2年くらい前に僕が適当に描いた絵をみて「この絵はなんだか疲れてる。世の中の人も疲れてるんだよ。そんな時にみんな疲れている絵は見たくないでしょう。誰もがきれいな海や空を見たいんだよ。そう思って描いてみたら?」と言ってくれて。

確かにそうだな、と腑に落ちました。僕はパンクミュージックが好きなんですが、すごく疲れている時はパンクよりも、さだまさしさんみたいなフォークを聴きたくなる。同じことだなと思ったんです。絵のタッチが変わったのはその言葉からかもしれません。昔はたぎる気持ちをキャンバスにぶつけていた感じでしたから(笑)。

――そうだったんですね(笑)。撮影がないときは絵の他に何をされているんでしょう。

吉村:朝起きて、オンラインで英語の練習をして、ボクシングジムに行って……というルーティンですね。ボクシングは役作りで始めたのですが、その後も通ってます。そのボクシングジムに横浜(流星)や菅田(将暉)とか同世代の俳優仲間がたくさんいて楽しいのも続けれられている理由かな。

ボクシングって身体以上に精神が傷つくスポーツなんですよね。ヘッドギアを付けているけど、ぶん殴られるって恥ずかしいし怖いですから。その繰り返しは演技にもいい影響が出るかなと思っています。

――確かに、ボクシングジムって精神も鍛えられそう。

吉村:ボクシングジムである社長さんとシャワールームで一緒になって、この間印象的な言葉を聞いたんです。「運動はいいよ。運動は“運”を“動かす”って書くだろ。だからやりたくないときでもサボらず続けた方がいい」と。そんな考え方があったんだな、素敵だなって思いました。昔だったら「うるせえジジイ」なんて思っていたかもしれませんが、今の僕に刺さったし、いいなと思えるようになってきましたね(笑)。

――文字通り「運動」ですね。さっき英語を勉強しているとおっしゃいましたが、きっかけはなんでしょう。

吉村:海外のオーディションに受かりたい、海外の作品に出たいというというのが動機です。事務所からも英語の他に殺陣や日本舞踊を身につけたらどうかというような話もあって。最初は「まあまあ……」とあやふやな回答をしていたのですが、正当な理屈を付けて行動する性格なのもあり、ごまかすのが嫌で始めたのが大きかったりします(笑)。

もう初めて1年半が経ちますが、上達への道は長いなと感じています。オンラインの先生とは「元気?」「今日はさっき起きて、まだ眠いんだよ」といった日常会話はできるのですが、この前街で英語で話しかけられた時は何を言っているのかわからなかったですね。スケボーに乗った外国の方が僕に何か話しかけてきたのですが早すぎて。ジェスチャーをみて「ライター持ってない?」って言っているんだなと理解しました。まだまだだなと痛感しましたね。

――国によって訛りとかあるので難しいですよね。海外の作品へのチャレンジは夢がありますね。

吉村:そうですね。この仕事に就いたのであればぜひ挑戦してみたいです。ハリウッドや韓国映画はもちろんですが、他のアジア、US、UKなどエリアにこだわらず、どこへでも行ってみたい。挑戦してみたいんです。

違うバックグラウンドの人たちと作品を創るということにとても興味があります。多国籍のチームで同じ方向に向かう1カ月があったら、人生が広がる気がします。

――海外といえば、旅はお好きですか?

吉村:ひとりだと心細いんですが、フィリピンとか行ってみたいかもしれない。昔は目的が見つからないと動けませんでしたが、今は考えすぎない気楽な行動もアリかなと思ってます。ただ普段は家か近所にいることが多いかな。

とはいえ芝居って旅のように知らない世界に足を踏み入れたり、引っ込めたりの繰り返しだと思うんですよ。やることが同じでも、役や環境が違うと自分が変わる。そういう変化の先の自分をみてみたいですね。

――吉村さんってアクターズスクールに通ったりされず、独学でここまでキャリアを重ねてこられた。

ご自身のセオリーなどあるのでしょうか。

吉村:それは答えのない、一生考えるテーマだと思います。でも、現時点での僕の答えは「集中力」ではないかと思っています。例えば同じ公務員という役柄でも作品が違えば演じ方も違ってくる。その微妙な差を演じ分けるのには集中力が必要だなと、最近はそう感じますね。

――同時期に複数の作品を同時進行されることもあるとききました。切り替えも大変ですよね。

吉村:そうですね。昼間はライフルを振り回す男、夜はアイドルなんていうこともありますが、大事なのは集中力。それぞれの撮影に対して最大限集中して取り組んでいます。

――俳優として、今後「開けたい扉」はありますか。

吉村:閉めたい扉はたくさんあります(笑)。真面目にお答えすると、今後さらにもっと色々な人と芝居をやって、自分がどんなものかを知りたい。前は評価されたいという気持ちが強かったですし、今も少しは思いますが、それよりも、「今自分が俳優としてどこにいるのか」を理解したいですね。そういう新たな自分の扉を開けたいと思います。

――影響を受けた俳優や監督はいますか。

吉村:監督・大根仁さんが『地面師』で電気グルーヴに劇伴をお願いしたことについて「もともと好きでいつか大きい作品で一緒にやりたかった」と話してくれたのが印象に残っています。その時に言っていた「一緒に仕事したい人がいたら駆け上がれ。そうしていつか自分が呼べばいい」という言葉が素敵だなと。

あとは柳楽優弥さんとも定期的に連絡を取ったり、会ったりしています。「界人お茶しようよ」って、カフェに入ってちょこっと話して、また次の良さそうなカフェに入って、居心地が悪かったら出て次のカフェに……って。このあいだ4軒くらいカフェをハシゴしてきました(笑)。

現時点では他に会っている人はあまりいなくて。関係性は変わらないけど考えが変わってくると、話が合わなくなってきて同世代や先輩後輩と次第に会わなくなってくるんですよね。だから継続して会っている人は少ないです。

――10年後の自分をどうイメージしていますか。

吉村:未来でも常に課題を持ち続けていたいですね。あとはユーモア。その二つがあれば、将来の自分が何をやっていたとしてもいいかなと思います。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

吉村:一緒に頑張ってみんなで笑える方向に人生を持っていけたら。「多様性」といいつつ、何か尖ったことを言うと叩かれる社会ですが、自分で責任を取りつつ、めちゃくちゃにやればいいと思うんですよ。誠実さを持っていれば、めちゃくちゃやっても誰かが助けてくれるはずです。そして謙虚さも大事。そんな感じでお互いに遠慮せずヘルプし合えればいいと思いますね。

活動範囲のみならず、視野も考え方も広がり、月日を経てますます魅力を増した表現者 吉村界人。
ただ、問いに対して一つひとつ実直に答えてくれる姿勢は昔のままで、
それは、常に自らに問いを投げかけながら丁寧に時を紡いできたということを物語っているようだった。

Styling: KNIT CARDIGAN ¥44,000 / LAYERED TEE ¥41,800 / BONDAGE SLACKS ¥66,000 以上SEVESKIG(全て税込) 問い合わせ: Sakas PR 03-6447-2762 その他スタイリスト私物

 

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