ADVENTURE JAPAN

Vol.24 界 霧島

鹿児島が誇る雄大な自然を見渡す温泉宿

鹿児島県霧島市、緑豊かな広大な国立公園内に2021年1月に開業した、星野リゾート 界 霧島。
上質な温泉に癒され、鹿児島の土地の恵みを味わう、心づくしの滞在を味わって。

Photo, text: Makiko Yamamoto

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星野リゾートが手がける界ブランド、九州では2施設目となる界 霧島は、天孫降臨の神話が伝えられる高千穂峰や霧島連山など、美しい自然環境が保護されている景勝地である霧島錦江湾国立公園の内部、高千穂峰の中腹に位置する。
ケーブルカーで行く湯浴み小屋など、広い敷地を活かした施設設計に、我々の冒険心が密かに刺激されることだろう。

ご当地部屋「薩摩シラス大地の間」

全室がご当地部屋「霧島シラス大地の間」となっており、気候条件が整えば全ての部屋から霧島高原と桜島を見下ろすことができる。
一面の広い窓に面したソファに座り、夕暮れには桜島の右側に沈む夕陽を、朝は高原の木々を楽しみながら霧島特産のお茶をいただく贅沢!
刻一刻と姿を変えゆく美しい景色に時間が経つのも忘れることだろう。

鹿児島県本土のおよそ6割を覆うシラス。噴火のときの火砕流や、空中に舞いあがった軽石や火山灰などが堆積したもので、吸湿性に富み、消臭と空気の浄化作用がある唯一無二の物質といわれる。
そんなゆかりから部屋のベッドボードに採用されたシラス壁。
日本百名山の一つ「霧島山」を含む霧島連山が見事に表現されており、デザイン性と機能性が両立したアイコニックなインテリアとして際立っていた。

部屋の鍵には薩摩ボタンが採用されている

全49のご当地部屋。
様々な部分に鹿児島の伝統工芸がさりげなく配されている。
こちらは客室入り口に設えられた薩摩和紙でできた灯篭。
薩摩藩の家紋「轡(くつわ)十字」がデザインに採用されているのもまた憎い。
さらに薩摩ボタンをあしらった鍵や薩摩錫の一輪差しなどの伝統工芸が滞在をさらに豊かなものに格上げする。
「薩摩の風」を感じながらのひと時は忘れられないエクスペリエンスとして記憶に遺るだろう。

オープンエアな部屋の露天風呂では静かに自分の時間を過ごすことができる。
晴れていれば桜島や錦江湾を望むことができるし、霧で視界が閉ざされれば、まるで空中に浮いた瞑想空間のような不思議な世界観が我々を包み込む。

部屋風呂の他に、離れの温泉の用意もある。
客室棟からスロープカーで向かう湯浴み小屋で、2種の内風呂(源泉掛け流しのあつ湯、長湯ができるぬる湯)と露天風呂を楽しもう。
特に広大なすすき草原と桜島を眼前に臨む露天風呂からの景色は贅沢そのもの。
遮るもののない平原に広い空……心の底からくつろげること間違いなしだ。

余談だが、ここ、霧島山の懐から湧出する霧島神宮温泉郷は、霧島神宮の参拝客のためにつくられたのが発祥とされ、ミネラルたっぷりの硫黄泉が美肌効果が高いと女性客から特に人気を博しているのだそう。

ご当地の楽しみごと

ここではたくさんの「ご当地」ならではのアクティビティが用意されている。
不要な外出が憚られる昨今、時間が許せばできるだけ多く体験して、「土地を知る」のがいいだろう。
上の写真は、鹿児島名物「かるかん」を煎餅にしたユニークなウェルカムスイーツだ。
筆者は幼少期から自然薯でできたしっとりふわふわのお菓子「かるかん」が大好物だったのだが、パリパリとした煎餅状は初見。また違ったお菓子として美味しくいただけた。

到着後は夕食まで土地を感じる手仕事を。
界 霧島では「おこもりグッズ」として、霧島のシラス大地の地層作り体験ができるジオテラリウムを提供する。
カラフルな砂を郁恵にも重ね、苔や溶岩を配置、さらにミニチュアの牛や人間を添えれば自分だけの小さな世界の完成だ。
土いじり気分で小一時間集中していると、なんだか日常のストレスや心配事がふっと溶けてなくなったような……そんな気がした。

ジオテラリウムで神経を集中させた後は、景色を前にリラックスタイム。
スイーツをアテに地元の焼酎を味わうというユニークなコンビネーション「だれやめセット」を注文しよう。
だれやめとは南九州の方言で「疲れを癒す」という意味があるのだそう。
ラムレーズンアイスクリームを挟んだ最中に芋焼酎。
ラムが焼酎へのいい架け橋になって、これが意外とイケる。
甘いものと適度なアルコールの相乗効果で、文字通り疲れがすっと癒えていくのを感じた。

歴史や神話に興味があるなら、車で約10分の霧島神宮に足を伸ばして。
建国神話の主人公であるニニギノミコトを祀った霧島神宮は、創建が6世紀と古い歴史を誇る神社で、南九州屈指のパワースポットとして知られる。
またこの近辺には霧島の七不思議や古宮址などもあり、ミステリーハンティングにはうってつけの場所だ。
境内は花と紅葉の名所でもあり、四季折々の美しい景色が見られるので多めに時間をとってのんびりと散策するのもいいだろう。

特別会席「黒豚しゃぶしゃぶ会席」

温暖な気候と広大な畑地を活かし、畜産が盛んな鹿児島県。
鹿児島県の名産品として広く知られている黒豚は、アミノ酸が多く含まれ旨味があり、柔らかく、脂がさっぱりしているのが特徴だ。界 霧島ではその黒豚に、さらに旨味のある鰹節をたっぷりと合わせしゃぶしゃぶで味わうことを提案している。
甘みのある黒豚の脂が鰹節によって軽くいただけるヘルシーな一品だ。

鹿児島といえば焼酎!
地元の焼酎を数多く取り揃えており、飲み比べが楽しい。
東京では幻と言われ高価で販売されている焼酎も気軽に飲めることもある……かも知れない。
焼酎に詳しくなくても大丈夫。
スタッフに好みの味わいを伝えると、おすすめを用意してくれる。
満腹&ほろ酔いの幸せ気分で食後のアトラクションへ向かおうか。

天孫降臨ENBU

夕食後には「ご当地楽 天孫降臨ENBU」に参加したい。
古事記と日本書紀に記されており、日本建国神話のはじまりである「天孫降臨神話」。
アマテラスオオミカミから命を受けた孫神ニニギノミコトが高天原から地上に降り立ち、この国を豊かに、平和に治めていく様子を伝える物語だ。
ニニギノミコトは、最初に降り立った高千穂山に剣を逆に刺してしるしをつけたという話があり、今も高千穂の山頂に残る天の逆鉾は、その時の鉾と言われているのだそう。
この迫力ある演舞、実は、施設スタッフが地元の方の指導を受けて演じており、「伝統芸能を絶やさないように」という界 霧島の方々の姿勢に筆者は深く感銘を受けたのだった。

滞在を通して、食で、アクティビティで感じた土地の歴史と味覚や空気感。
神話に彩られ、またシラス大地に育まれた霧島の地にはなにか特別な力が宿っている、そんな気がした。

星野リゾート 界 霧島
〒899-4201
鹿児島県霧島市霧島田口字霧島山2583-21
界予約センター(10:00~18:00):0570-073-011
https://kai-ryokan.jp/kirishima/

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