—愛に溢れた真の紳士—

今回、親子旅というテーマのもと、愛息子・愛流(あいる)君とともにサイパンを訪れた窪塚氏。
念願のハリウッド進出も今秋に迫り、彼の視線はさらにクリアに研ぎ澄まされていたものの、一切傲ることもブレることもなく、常に「窪塚洋介」であり続けられるのはなぜだろう。
それは彼の中に一本通った「軸」。そして血液のように隅々まで流れる「信念」、「愛」…

それらが作用しているのだと気付かされた旅だった。
最終夜、旅を振り返りながらのインタビューを堪能いただきたい。

Photo: Sebastian Angel
Interview & Text: Makiko Yamamoto


―今回はありがとう。本当にいい旅だったよね。

こちらこそ色々わがまま言いまして。笑

―今回確か初めてのサイパンだったんだよね。
あのね、ぶっちゃけていいですか。実は昨日バンザイクリフとかあの辺行ってた時に気が付いたんだけど、昔カロリーメイトのCMを撮りに来てて、その時俺の高校時代のツレがマネージャーやってて、そいつと一緒に来たのをあの大砲のとこ行ったら思い出した。だから2回目なんだ。

―忘れてたんだ(笑)。
忘れてた。グアムだったかなと思ってたんだけど、やっぱサイパンだったんだ。「あーアイツと来たな」と思い出した(笑)。でも気がつくまでは1回目みたいな新鮮な気持ちで周ってたけどね。

―CM撮影だと忙しそうだから記憶に残りにくいのかも。
そうだね。海は入ったりもしたけど、今回みたいに「マニャガハ島に行こう」とかそういう感じではなくて、わりとタイトなCMのスケジュールの中で夜空いた時ちょっと遊んでってやってたから。今回の方がはっきり”サイパンに来たぞ”っていう感じ。
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―今回は観光がメインだったもんね。
ほんとほんと。なんか家族旅行と仕事がなんか一緒になっているような、すごくありがたい、素敵な6日間をありがとうホント。今回やらせてもらったアクティビティは全部楽しめたし、毎日「ありがとう」と思ってた。海の中でも「すごいありがとう」ってなって。シュノーケルしながら「ありがとうございます」「ありがたい」とか言ってたよ。水中でボコボコしちゃってたけど水ってなんか波動を伝えるというからさ、「伝わってるかな」と思いながら。アドキンにも、地球にも感謝したいっていうようなね、大きい気持ちになれた。

―毎日ひしひしと伝わってたよ。そしてこちらこそ毎日感謝していました。本当に6日間ありがとう。
なんか、今の日本はいつ何があってもおかしくない現状で、それは地震や原発、そしてその先にあいつらが目論んでる戦争だったり、ある意味とんでもない時代。でも、そんな時代にこんなに毎日肚の底から幸せを感じ、楽しさを感じて、感謝出来る事って本当に幸運なことだと思う。でもそれは自分が信じてきた道を歩いて来れたから、今またここサイパンで「ありがたいなぁ」って思えてるから、信じてきて良かったなと思うし、来る前より豊かにより幸せになった。

―直近の大きな冒険ってやっぱりハリウッドでマーティン・スコセッシ監督の「SILENCE」に決まったことかな。
うん、確かに。「あんなに好きだった映画監督、しかも“地球最後の巨匠”と言われてる人に毎日ベタ褒めされて撮影してる」って白昼夢みたいに(笑)。毎日夢の中で仕事してるみたいだった。俺、キチジロウって役をやってたんだけど、「さぁキチジロウ、今日は俺たちにどんなものを見せてくれるんだ?」みたいな感じでさ。後半ハリウッドのスタッフにも「お前はこれが公開されたらすごい事になるから、先に写真撮っとくぜ」って写真撮ってくれって言われ出したりして。そういうのを体感してたら狐につままれているような感じもするけど、なんか俺が芸能界に入った時に扉が開いた感覚をまた感じたんだよね。「あ、次の大きいのも開いちゃうかもしれないな」って、そう感じる。

35―すごいね。ついに新たに大きな扉が開いちゃったんだ。改めておめでとうございます!
ほんとアドベンチャーだよね。やっと“俺そのまんま”で仕事が出来る環境がくるのかなってね。やっぱり日本は土地というよりフィーリングが狭いから窮屈だし。例えば「家族と仕事」っていうこと一つとってもさ、ハリウッドと日本は全然意識が違う。今回、真紀子ちゃんは「家族もぜひぜひ」って言ってくれて家族も呼んで仕事ができたじゃん、でも日本の感覚では「仕事の現場に家族を連れてくる人=不届き者」って風潮がある。俺は日本の仕事でもたまに現場に家族を連れて行っちゃうんだ。白い目で見られてるのも分かってるんだけど気付かないフリをして(笑)。
でもさ、ハリウッドでは逆に俺に「家族は来ないのか?なんでお前は一人でいるんだ」って。人生において大切にしてるモノの順番が、俺に近いんだなって感じたんだよね。
でもそこのステージに一筋縄で移行できるとは思ってない。それはさっき話してた今の日本の現状も要因の一つだよ。近い将来、日本人は何かしら壊滅的な被害を被ると思ってて、素敵な未来があるような国に思えない。そういう不安感とか閉塞感とかっていうのは、新たな大きな扉がある今の俺でも感じてるから、ちゃんと地に足着いて生活している人達が感じてるフィーリングはもっと大きいのかなと思うよね。横柄な言い方で申し訳ないけど(笑)。
俺らはもっと大きい未来を見てるし、もっと長く楽しんで生きたい。せっかくこんなアドベンチャーな星に生まれて、こんな最高な楽しいことがいっぱいあるのにさ。やっぱり俺は守れることは守りたい、でも目に見える範囲、手の届く範囲を自分の愛で満たせたらいいと思う。無理はしないし、政治家に立候補して世界を変えたいとかは更々思ってないし、そもそも政治家を信じてないし選挙を信じてないからね。俺は俺のやり方で愛を持って、このmy wayを歩いて行けたらそれでいいやと思ってる。

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―無理して世界を変えようとするよりも聞きたい人が聞いてくれれば、それでいいんだよね。

そうそう、アンテナが俺に向いてる人はキャッチしてくれると思うし、息子の愛流なんかは俺の背中を見てそうしていくだろうしね。

―窪塚さんが人生の中で大切にしていることってなんだろう。
そうだなぁ。楽しむってことだね。人生1度きり、どんなシチュエーションでも今は今だけだからその”今”を無駄にしないように、最大限楽しむ。やっぱりピンチはチャンスというのはすごい体感してきたから、さっきも言ったけど、日本がピンチ、世界がピンチという時だからこそ、見つめなおせる幸せだったりとかありがたい事とかがあると思うから、それをしっかり見据えて、掴まえて放さないようにして生きたいなと思うし、そうしてるかな。

―うん、話していてすごくそう思う。
“コドナ”なんで俺らは。大人とか言ってるけど結局大きい子供だと思うから。前も言ったかもしれないけど、コドナでいつづけることにやっぱり誇りを持っているので。

―旅の途中にも言ってたけど、マーティン・スコセッシ監督もそうなんだよね。目がキラキラしてるコドナなんだよね。
うん。俺が面白いなと思ったおじいちゃんはみんな子供みたいだし、そういう人が社会的にすごく評価されてたり、面白いことをし続けてる人ってのはキラキラしてるから。それってやっぱその人の内側の光が出てきて外でキラキラしてるんだよね、そういう風に自分もありたいと思うし、そのためには、今話してるようなことを大切にして、自分の中での優先順位を間違えないことなんだよね。やっぱり家族、仲間。仕事ももちろん大切だけど、その順番が俺の中ではっきりしてると思う。だから家族と仕事を天秤にかけたら俺は家族を取るし、「それだったらハリウッドの仕事ないよ」って言われたら、「あぁ、そうすか。じゃぁいいですわ」って感じだしね。

―ハリウッドが肌に合うみたいだけど拠点を海外に移すことは考えてないの?
考えてるよ。多分日本にはもう住めなくなるかなと思ってるしね。話すと長いけど、日本列島って「龍」みたいな形をしてるじゃん、それで各地に原発が建設されている。なんで今、その龍のカラダにあんなに原発をに巻き付けられてるかって、考えたことある?

―えっ、どうしてだろう…。
「龍=日本」はアメリカの堤防なんだよ。第二次世界対戦後アメリカが日本を占領したじゃん、そしてアメリカはロシアと中国っていう大国を警戒してるよね。アメリカからするとロシアと中国の一番近くにある日本という堤防でなにかあったら、そこから原爆も作れるし、なんだったらそれごと爆発させるぞっていう。そういう考えがあるんだよ。俺らの意思なんか何にもない。

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ーそれって、日本人は人間以下…むしろ日本そのものが兵器になっちゃうってことだよね。
そんなもんだよ。だって今のあいつらのやり方見てると分かると思うけどさ、俺らの事考えてないとかいうレベルじゃないよ。俺らのこと殺そうとしてるからね。
それだけじゃない、今日本でものすごい数のがんセンター作ってるでしょ、特に医療業界とか学者とかからしたら日本は絶好のモルモットとしてみられてる。Aflacなどのがん保険が一気に撤退したでしょ、なぜかって、これから日本で急増すると予想されるがん患者に対する支払いを賄いきれないと判断したから。だからやめたんだよ。そんなのちょっと調べて、ちょっと角度変えて考えればすぐ分かることだと思うんだけど。

—もう存在自体が否定されているというか。恐ろしいね。確かに海外でニュースをみていたらアジア代表は中国だもんね、完全に。日本のことは全く話題にあがってこない。
要は日本は世界から見捨てられてる国ということを自覚して、それでも自分自身にプライドを持って“世界に愛を振りまく”ということをしないといけないから。だから、俺は日本人だけど日本にとらわれない。「日本ていうものがあった」という、“元日本人”みたいな感覚だし。それは良い意味でコスモポリタン、地球人ですみたいな。そういう意味。
そういう奴って世界中にいっぱいいて、もっと苦しい目に遭ってるシリアとか、それこそこの間アドキンで連れていってくれたトルコも今大変なことになっていて、世界中が今どんどんどんどんエグイ方向になってるから、ピンチはチャンスでだからこそ繋がれる奴らっていうのがいて、「だよな、お前もそう思ってただろ」って言って。そしてその奴らがインターネットだったり、実際直接顔合わしてだったりとかで繋がって、きっと世界を変えていく、次の世界の色を塗っていくみたいな。サイパン来てトロピカルな部分だけじゃなくて、戦跡とかを訪ねることで悲しい歴史があった事実も踏まえて。「それを今日話したいよね」って昨日話してたじゃん。そこは無視して「イェーイ」とかは俺は言えない。過去を踏まえて更に俺たちの時代、俺たちの色を塗りたいなと思いつつ、サイパンでは毎日最大限楽しませてもらったんだ。

―その国の歴史を知ってから行くのと、何も知らないで行くのとは得るものが違うね。
時間の濃度というか価値が違うよね。戦時中に辛い思いをした人がいて、その上で俺はサイパンでこんなに楽しめたってこと。それを知っているだけで体験した価値がすごくあがるし、何か力になる。今はネットの時代なんだからちょっと調べたら分かることもいっぱいあると思うし、なんかそれをするかしないかっていうのは大きいと思う。
旅だけじゃなくて、音楽もそう。ネットで俺が(卍LINEのライブで)酔って盛り上がっている写真だけみて、「パーティー野郎」とか色んな事を言われるんだけど、俺は「現実逃避してください」という音楽を作ってるつもりはなくて、“現実に立ち向かうためのレゲエ”だと思ってる。パーティーを通して、現実に立ち向かえるメッセージやエネルギー、楽しさを俺は歌ったり、伝えたいと思ってて。

―わかる。卍LINEのリリックには想いや思考が凝縮されてるよね。ビシビシ伝わってくる。
うん。言い訳する気は更々ないんだけど、俺は楽しみながら現実に立ち向かうってことをしたいだけ。「考えなくていいよ、考えなければベクれないよ」みたいなことじゃなくてさ。(ベクれる=身体はおろか思考も放射能に冒される)

―話は変わって、今後の冒険の予定は?
そうだな~人生がマジ冒険になってきちゃってるから(笑)。次の海外の陣地を探しとこうかなって感じもあって、候補はいくつかあるけどその中で子供の将来と自分の今後の仕事の成り行きを踏まえて、ちゃんと選定してやってくってことが一番の冒険かな。今の社会は死ぬ確率がすげぇ高くなってるんだけど、でもその中でなるたけ楽しみたいし。間接的であったとしてもバビロンをはじめとした第三者になるべく被害を加えられたくない。それはほんと心外なんで。

―ほんとにいつ何が起こっても不思議じゃない状態だもんね。でも一回全てが崩れてフラットになったらまた新しく構築できそうな気もするけど。
うん。元日本人、地球人として次の時代を作りたい。ピンチはチャンスだからここサバイブ出来たら、その先苦しい事もいっぱいあると思うけど結構楽しい良い事もいっぱいあると思うからね。

サイパン滞在中、いつも感謝の辞を述べてくれていた窪塚氏。
そして些細なことに対しても「ありがとう」と心を込めて伝えてくれる聡明な息子愛流君。
この2人の紳士が今後どう輝きを増していくのか。ますます気になってしょうがない。

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プロフィール
窪塚洋介
1979年生まれ。映画「GO」では史上最年少で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。レゲエアーティスト卍LINEとしても活躍し、5枚のオリジナルアルバムと昨年12月には自身初のベストアルバム
「卍LINE BEST」を発売。今後はマーティン・スコセッシ監督「SILENCE」でハリウッドデビューを控えている。