INTERVIEW

AK-69

勇猛果敢な冒険野郎

3
Q9月から新しいプロジェクトを始められたということをお伺いしたのですが?
Aはい、そうですね。ただ、情報解禁はまだ先なんですよ。
Qでは言える範囲で(笑)。
A一言でいえば、新しい戦いに出る。ってところですかね。
自分の音楽活動においては、インディペンデントな姿勢というのは、一貫してずっと変わっていません。
ただ、2つの道が目の前にあって、順当に行ける道と険しい道があったら、いつも険しい道を取るようにしてきてるんです。もちろん険しい道には色んな困難とか苦しいこととかついて回るけど、その成し得づらい状況から俺は成し得えたいんです。なぜなら、その方が男として単純にかっこいいから。過去にもずっとそういう選択をしてきたし。
でも、今回が今までで一番大きな挑戦というのは間違いないですね。
Q新しい挑戦って不安もありますけど、ワクワクもしますよね。
Aそうですね、俺はほんと半々。だいぶ不安もありますけど、やるしかないなぁという。
Qもうビジョンは明確ですか。
Aはい!もちろん。今は言えないんですけど、自分でも震えるくらいの目標があるんです。それを成し得るということは、日本で誰もやった事のない形になると思う。でも、それは自分がここまでインディペンデントなやり方をしてきたからこそ、その位置につけるんじゃないかっていう自信がはっきりありますね。
Q選択肢があると困難な道をとってきたとおっしゃいましたが、それは昔からですか?
Aいやいや本当は超グータラですよ。グータラだしビビリだし、だからこそ歌のことというか自分がこれだと思って人生賭けてることに関してだけは、やっぱり強くありたいという気持ちが強くて。だから敢えて自分にとって厳しい道をとるようにしてるんです。NYでアルバムをレコーディングしたのもそうです。当時、名古屋の日本ガイシホールで初めてワンマンライブ成功させて、国内ではかなり勢いに乗っていたんですよね。だからそのまま次のアルバムを制作することは出来たんですけど、敢えてそこでNYに行ったのも、自分が今まで出来なかったことに挑戦したかったから。海外には旅行で何回も行っていても、そこに住んで今までで最高傑作のアルバムを作らなきゃいけないという、まぁすごいプレッシャーを背負って行くことになるんで。予算も国内で作るよりもものすごくかかるし、中途半端なアルバムを持ってくるわけにはいかないという重圧。でも敢えて今までになかった挑戦を自分に課したあの時はすごい挑戦でしたね。
その挑戦の結果、すごいアルバムが作れて、その後も良いツアーが出来たというのに繋がったんで、やっぱり究極まで追い込むのが、自分のスタイルなんだなって。
Qカッコいいですね! 今の時代、道無き道を進むのってすごく難しいと思います。
Aそうですね、それは困難と苦悩とか不安とか、色んなネガティブな感情が自分の事を支配してこようとするんで、普通ならみんな選ばないだろうなっていうのはすごく分かるんですけどね。でも、だからこそ、その先にみえるものが光り輝いていたり、さらに大きかったり、さらい強いものになるっていうことは自分の経験上確かだと思います。その道を選んだからこそ得られるものって必ずあるから。
Qそもそもインディペンデントでやっていく、その選択ってすごい難しいと思うんですよね。周りが就職する中で、なぜ音楽にいこうと?
Aそれは僕が一貫して大事にしていることで、”男だからかっこつけたい”っていうのが原点なんです。若かりし頃、僕は人並みにグレてまして、悪ければカッコイイって思っちゃっていて。恥ずかしいですけど(笑)。でもただ悪いよりも”何かがある不良”の方がもっとかっこいいじゃんって思って。それが始まりでしたね。元々、音楽は好きで、「なんか自分のライフスタイルとしっくりきてねぇな」と思いながらも自分で歌作ったりとかしてたんですけど、そんな時にhip-hopに出会って、特にGangsta Rapというウェストコーストのhip-hopを聴いて「これだ!」って思った。俺のライフスタイルを音楽にして表現できる“hip-hopというフィルター”が見つかったんです。ただの不良よりもラップやってhip-hopやってる不良の方がかっこいいだろ、そっちの方がモテんだろという、やっぱり原点はそこですけどね(笑)。
Q何か見つけたら真っ直ぐに突き進むんですね。
Aそうですね、それが17の時だったんでかれこれ自分の人生の半分以上は、ずっと音楽やってきてるんで。よくやってんなと思いますけど(笑)。
Qすごいですよね、そこから続けてやってるって。読者の方にヒントを! 
A何にも見つかってない状態だったら、俺みたいに何かやり続けるというのは難しいと思うんですけど、何か見つかってないなら見つかってないで別にそんな焦る必要はないと思うんです。別にそれはいつか見つかるもんだと思うし、見つかった時にその初期衝動を忘れないでほしいなと思います。やっぱりさっきも言ったんですけど、一つのことを成そうとすると良いことばかりじゃないですよね。始めは俺も「ラップで有名になったら女にモテて、お金儲けて…」みたいな良いことばかり想像してたんですけど、現実は全然そうじゃなくて。だから、理想はあってもみんな現実でくらうネガティブな感情に押しつぶされて最初の目標を変えちゃったり、失うことになっちゃったりする事が多いと思うんですけど、でも一番始めに「これになりてぇ」とか、「こうしてやりてぇ」と思った初期衝動を何があっても忘れないことが大事。初期衝動で感じた一番ポジティブなイメージを持ち続けることが鍵なんじゃないかなと思うんです。だからと言って夢は必ず叶うとか綺麗事を言うつもりはない。でも努力しない人に夢が叶う事は絶対にないっていう、それは確実に言える事なんで。努力したら絶対に夢は叶うとは言えないけど、努力しなかったら絶対に夢は叶わない。だからそこは忘れないで欲しいなと思います。
Q今後冒険したいことや挑戦したいことは?
A夢はこのインディーズやインディペンデントなアーティストとして、誰も成し得なかったことをこれから始めていくことですね。ドームでライブが出来るくらいのアーティストになった暁に、とんでもないことをしでかそうという、そこまでの計画はあるんで。それを成し得た時に「あの時Adventure KingでAKそうやって言ってたな」っていうのをどこかで思い出してもらえたらね。いつも公言したことを何年かかっても成し得て、「あん時言ったことをやっただろ」というのが俺のスタイルなんで。ただ、そこまでは“男は黙って行動”かな。
2
Profile エーケーシックスティーナイン (ミュージシャン/実業家、愛知県出身)
メジャーではなくインディーで活躍することに価値を見い出しているAK-69は、通常ならば逆境とも言えるその状況を逆手にとり、「だからこそやる意味があること」を追求し続けるヒップホップ・アーティストである。
シンガーのKALASSY NIKOFF名義でリリースした『PAINT THE WORLD』をソロ活動の皮切りに、『REDSTA -The Rap Attacker-』『REDSTA -The Melodizm-』で評価を確立。その後、ベスト盤『BEST OF REDSTA』や2008年の『TRIUMPHANT RETURN -Redsta Iz Back-』など複数の作品を経て、徐々に知名度を上げた翌2009年には倖田來未のアルバムへとゲスト参加。同年9月に『THE CARTEL FROM STREETS』を発表した彼の勢いは2010年も止まらず、AIのデビュー10周年シングル「Still…」をはじめ数多の客演にその名を連ねると、続く『THE RED MAGIC』がオリコン週間総合チャート初登場3位を記録。同作の先行シングル「PUBLIC ENEMY」のミュージック・ヴィデオは各アワードへノミネートされ、結果的に『SPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDS 2011 “BEST HIPHOP VIDEO”』/『流派 PV AWARD 2010』を受賞した。2011年9月にはみずからのアーティスト・ヴァリューを決定付けるべく、『THE RED MAGIC』のリリース・ツアー・ファイナルを日本ガイシホールで開催し、全国から約10,000人ものオーディエンスを集める成功を収めた(この模様は、のちにDVD&Blu-ray化された)。その偉業を象徴する形で、同年12月に『Billboard JAPAN MUSIC Awards 2011 “INDEPENDENT OF THE YEAR 2011″』を、翌2012年3月には同『”INDEPENDENT ARTIST OF THE YEAR 2011″』をそれぞれ受賞。また、異例のロング・セールスを記録した前述の『THE CARTEL FROM STREETS』が2012年2月度、『THE RED MAGIC』が同10月度のゴールド・アルバムとしてそれぞれ認定された。
時を同じくして、AK-69は楽曲制作を兼ねたニューヨーク武者修行を敢行。2013年1月には、オリコン総合チャート2位を射止めた通算7枚目のソロ・アルバム『The Independent King』を発表。同作収録曲「START IT AGAIN」のミュージック・ヴィデオは、『MTV VMAJ 2013 “BEST HIP HOP VIDEO”』にノミネートされた。さらに同作のリリースを記念した帰国凱旋ライヴを全国ZEPPツアーとして計5会場6公演で開催し、約12,000人の観客を動員。同年7月には不動の人気を証明した同ライヴの模様と自身初となるドキュメンタリーなどを併録したDVD映像作品『THE MOVIE ~Road to The Independent King~』をリリースし、自身の作品としては初のオリコン総合チャート首位を獲得するに至っている。
また、現在も日本とNYを行き来しながら活動を続けるAK-69は、2012年8月、世界中へ影響力を持つNYのヒップホップ専門ラジオ・ステーション=HOT97が主催する野外イベント『Harlem Day』に日本人ラッパーとして初めて出演。そこでの盛況もあり、HOT97が最もホットなアーティストを集めてNYの老舗ライヴハウスSOB’sで開催する『HOT97 presents: “Who’s Next”』にも初の日本人アーティストとして出演し、目の肥えた地元の観客を唸らせた。加えて、同局公式HPの『New on HOT97』やインターネットTVチャンネル=HOT97 TVの『97 SECONDS』(グラミー受賞者らトップ・アーティストをピックアップする人気企画)でもそれぞれ日本人初となるインタビューを受け、「日本のJAY-Z」と紹介されるなどAKはここへ来てヒップホップの本場でもその評価を高めている。
そんな状況下、2013年末に自身2作目となるベスト・アルバム『Road to The Independent King』を発表。同作の新録曲でUSトップ・アーティスト、DJ KHALEDと競演を果たすと、2014年2月~3月には日本ガイシホールと日本武道館で初のアリーナ・ツアーを開催。それぞれ内容が異なったこの2公演では、自身の過去と未来(つまりこの舞台に至る道程)を再提示。デビュー当時から変わらぬ姿勢で頂点まで登り詰めることを、満員となった各会場の観客へ公約してみせた。そして約1年後の2015年3月、そのマニフェストを実現すべく、最新アルバム『THE THRONE』を発表。DJ KHALED同様、USトップ・アーティストであるFABOLOUSを客演に迎えたシングル「Oh Lord」のREMIXなど話題曲を満載した同作のリリースと前後する形で、全国13都市を回るキャリア初かつキャリア最大規模となるホール・ツアー『FOR THE THRONE』を開催した。
ここまで着実に、そして全速力でステップ・アップしてきたAKだが、彼は決して現状に満足などしていないだろうし、これまでに彼がこなしてきた血の滲むようなハード・ワークを見ていると、AK-69が目指す先に期待せざるを得ない。黒人をルーツにしたヒップホップ・ミュージックがその背景の通り「持たざる者の音楽」であるならば、「インディー」「地方都市」など、様々なハンデを(みずから)背負いながらもそれをはねのけようとするAK-69の姿勢こそ、正真正銘のヒップホップなのである。

  • Share
top